シャープ9月危機!! 経営介入へ牙を剝き始めた鴻海

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「鴻海抜き」の再建計画も始動

鴻海に翻弄されるシャープの姿に、銀行の態度も変わってきた。

従来は、鴻海との協業が「巨額の追加融資を行う大前提」(主力行関係者)とされてきた。ところが提携に不透明感が強まり、「妥結を待っていられなくなった。追加融資の焦点は9月中旬に提出される“実抜計画(抜本的な再建計画)”に移っている」(金融筋)。

シャープの資金繰りは、ここ数カ月で急速に悪化し、有利子負債は1兆円超。8月末時点で、短期資金調達手段であるコマーシャルペーパー(CP)は約3000億円に上る。

S&Pは8月31日、短期会社格付けを「Aマイナス2」から「B」へ2段階引き下げ投機的水準とした。CPの新規発行は困難で、融資に頼らざるをえない。

8月には主力2行(みずほコーポレート銀行、三菱東京UFJ銀行)が本社や工場など主な固定資産を担保に1500億円の追加融資枠を設定、月末までに大半が実行された。9月以降もCP償還に加え、運転資金、来年9月に償還を迎える2000億円の新株予約権付き社債の手当てが必要となる。「喫緊にも2000億円程度の追加融資枠の設定が必要だろう」(金融筋)。

9月10日にはデューデリジェンスの報告書が出る。これを基に、「シャープと銀行で、下期以降、V字回復できるような実抜計画を作成する」(主力行関係者)。すでに担保にとれる資産はない。シャープは、国内従業員2000人削減を含めた固定費1000億円圧縮計画を提示しているが、「固定費のさらなる削減は必須だ」。

鴻海が先か、銀行が先か──。当事者能力を失ったシャープに、さらなるメスが入ろうとしている。

シャープの業績予想、会社概要はこちら

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(前野裕香、山田雄大 撮影:ヒラオカスタジオ =週刊東洋経済2012年9月15日号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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