結局「IoT」で何ができるようになるのか モノ同士がつながり合うってどういうこと?

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坂村 健(さかむら・けん)/東京大学大学院情報学環ユビキタス情報社会基盤研究センター長。1951年生まれ。84年からオープンなコンピュータアーキテクチャ「TRON」を構築。2002年からYRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長を兼任。いつでも、どこでも、誰もが情報を扱える社会実現のための研究を推進している

──遠隔操作にいい?

ネット経由リモコンは今でもメーカーの提供するアプリで可能だ。これから重要なのは、メーカーの枠を超えたオープンな──A社の加湿器とB社のエアコンなどモノ同士が会話し判断して協調し最適の環境を作ってくれるような──応用だ。

名刺などでメールアドレスを知らせ合うのには、メール交換していいという意味合いがある。同じようにモノも最初にいいよと言ったら、つながったモノ同士は「会話」ができるようになる。

──オープンが大事なのですね。

今、世界で注目されているのはオープンなIoTだ。クローズドなIoTはすでにトヨタ自動車のようなジャスト・イン・タイム納品でやっている。それを今まで一回も取引のなかった会社ともやりたいとする。それにはそれなりの仕組みを要する。そのための共通のオープンなプロトコルなどが必要だ。「インダストリー4・0」や「インダストリアルインターネット」といった業界連携のオープン化活動が注目されるのはそういうわけだ。

産業構造もネットを軸に変わりつつある

──オープンデータも盛んです。

米国が言いだしたものだが、政府の予算にも限りがある。それをカバーするために公共データを公開し、国民が一緒に問題解決しようという考え方だ。たとえば道路管理。全部を毎日点検するにはたいへんなコストがかかる。一方で住民は毎日使っている。不都合があったときにメールなどで国や自治体に伝える。その情報をネットに公開する。そういう「公開大掲示板」の仕組みの活用がいろいろ注目されている。

どれだけデータをオープンにしているかが、G8サミットの報告事項になっているほどだ。データをクローズドにして国が情報を独占するというのは昔の話。今は、民主主義が究極に進めばすべての公共データは公開するというのがスジだ。従来は公開しようにもコストが巨額に上った。ところが今はネットがある。

──何事もネットが軸に。

産業構造もネットを主体にして大きく変わり始めている。ネットにつながりデータ公開が進むと、またデータがますます集まってくる。話題のビッグデータ解析や人工知能、あるいはディープラーニングは、コンピュータの中で大量のデータを瞬時に分析することから着々と仕組みができ上がってきている。モノの売り方、研究開発の仕方、流通の仕方、あらゆるものに影響を与えている。

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