主要通貨の低金利はいつまでも続かない この異常は安定ではない

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 ドイツも近く同じ状況になる。また、エネルギー採取の新技術が、世界経済の成長鈍化と相まって、商品相場に顕著な影響を与え、アルゼンチン、サウジアラビアといった商品輸出国の黒字が急減している。

第二に(必ずしもすべてではないにしても)多くの中央銀行がインフレ期待を高める方法を最終的に見つけ出す。各国中央銀行は、レバレッジ解消を加速させるため、投資家を実物資産に向かわせる方法として、また実質賃金と住宅価格の調整を促すメカニズムとして、インフレの高進を容認することに向かう。

各国中央銀行が無力であり、いくら努力してもインフレ期待を高めることはできないと論じることはナンセンスだ。極端な場合、各国政府は、穏やかなインフレを容認する者を中銀首脳に任命することができる。これは、インフレを抑制するために「保守的な」中銀当局者を任命するという考えと対照的だ。

第三に、欧州の暗雲もいつかは晴れる。もちろん、すぐにそうなるわけではないし、事態はよくなる前に悪化する公算が大きい。ただ、ユーロ危機が最終的に解決されれば、今日の不透明感を生んでいる極度の不確実性は消滅する。

超低金利はしばらく持続するかもしれない。確かに日本の金利はかなりの期間、異常な低水準で安定したままであり、もう上昇するしかないと見えたのに一段と下げることもあった。だが、今日の低金利のメカニズムはまったく安定したものというわけではない。逆方向に動く可能性がある──驚くほど迅速に。

(週刊東洋経済2012年9月15日号)           ©Project Syndicate

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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Kenneth Rogoff

1953年生まれ。1980年マサチューセッツ工科大学で経済学博士号を取得。1999年よりハーバード大学経済学部教授。国際金融分野の権威。2001〜03年にIMFのチーフエコノミストも務めた。チェスの天才としても名を馳せる。

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