「HoloLens」は仕事のやり方を根本から変える 「残念だったGoogleGlass」とは違う"本気度"

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3Dグラフィクスで生成される、何らかの”モデル”を複数のHoloLensユーザーで共有しながらアイディアを出し合ったり、何かを学ぶというのは、HoloLensの典型的な使い方だ。

BUILDの基調講演でも、映画に登場させるコンピュータグラフィクスのキャラクターを検討するため、HoloLensを用いて完成度を確認したり、会議室に集まってキャラクターの容姿や動きを検討、変更を加えていくといった使い方を見せていた。

さらに宇宙のさまざまなさまざまな星に旅をしたり、火星探査を仮想的に行うといったコンテンツも作られている(筆者はあまりの行列に体験を断念したが)。

医療分野への応用も

また、Case Western Reserve Universityでは、医学生が人体を学ぶためのアプリケーションをマイクロソフトと共同開発している。よくある人体模型を目の前にディスカッションするようなものだが、違うのはアニメーションを観察できることと、自由に各部をクローズアップしたり、インタラクティブに触れながら議論を進められることだ。

現実の体内スキャンデータを元に治療方法を検討するといったことにも、将来は発展していくことだろう。同じ仮想空間にネットワークで参加することもできるため、遠隔地にいる医学者などに意見をもらうことも容易になる。

アプリケーション開発は、用途ごとに開発をしていかねばならない段階で、簡単な汎用アプリケーションといったものはまだ存在しない。しかしながら、ハードウェアや関連する開発ツール、ライブラリの完成度は想像以上だった。昨年公開された試作機に比べ、軽量かつ装着感が改善されていたことも報告しておこう。

ただし、筆者を含めて何人かは網膜照射型ディスプレイの自動微調整がうまく働かなかった模様だ。HoloLensのディスプレイは目の前のノートパソコン画面程度のサイズに見えるが、正面に見えるはずの画面が上の方にズレていくという現象を体験した。自動的に位置調整するはずが、誤動作しているのだろう。

もっとも、HoloLensが示した可能性は大きい。マイクロソフトが昨年1月に発表した当初は荒唐無稽のようにも思えたアプリケーションが現実になろうとしている。HoloLensを体験すれば、そこに知的労働の質と生産性を飛躍的に高める可能性を感じる事ができるだろう。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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