キリン株主総会、上場来初の赤字も「閑古鳥」 お土産廃止で、出席者は4分の1に

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――レアル安による減損の背景についても、もう少しわかりやすく説明して欲しい。

溝内良輔・常務執行役員(ブラジル担当):レアルについては、2014年は1ドル=約2.2~2.3レアルだったが、2015年後半には4レアルまで下落した。モルト・ホップ・缶など原材料の多くを(ドル建てで)輸入しているため、製造コストが約2倍になった。

ブラジル経済の停滞も響いた。2013年の経済成長率は約3%だったが、2014年はほぼ0%。2015年はマイナス4%ほどになった。競合である(地元メーカーの)ペトロポリスが、(キリンの利益市場だった)北部に進出したこともあり、昨年のブラジル事業はビールの販売数量ベースで前年比マイナス約17%となった。

昨年8月に現地のCEOを交代。役員も8名中7名を交代した。2015年第4四半期にはビールの販売数量が下げ止まり、今年の第1四半期も前年を超えるところまできている。(目標とする)2019年の黒字化に向けて頑張っていきたい。

――ブラジル事業は減損となったが、これにこりず大きなチャレンジを続けて欲しい。

磯崎功典・代表取締役社長:ブラジルの件は一つの教訓として生かしていく。そして、萎縮することなくチャレンジをし、海外進出も続けたい。

――海外企業の買収後の統合についてどう考えるか。

西村慶介・代表取締役常務執行役員(東南アジア担当):買収した企業を多面的に評価して、自立させるべきか、キリンHDが経営資源を投入すべきかを見極める。(2015年夏に株式の55%を取得した)ミャンマー・ブルワリーについても、今後の市場環境の変化を見ながら、どういった支援をすべきか検討していく。

株主は国内の再編にも関心

――日本のビール業界の再編についてどう考えるか。

磯崎社長:一般論として人口が減れば、ビールの消費も減っていく。遠い将来には、再編ということもありえるかもしれない。ただ、現時点で明確な方針や事実があるというわけではない。

――キリンは最近、元気がない。原点に帰ってもらいたい。

布施孝之・キリンビール代表取締役社長:キリンビールが元気になることが、グループ全体のブランド価値向上の源泉。2015年、ビール類(ビール・発泡酒・新ジャンル)の販売数量が9年ぶりに前年を上回り、シェアも6年ぶりに高まったことで、社員の士気が上向きになった。

磯崎社長:社内で現場を回り、対話集会を開いており、社員が元気になっていることをひしひしと感じる。目に見えた成果が出るまでにはもう少し時間がかかるかもしれないが、是非待っていて欲しい。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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