郵政上場計画の裏側 民業圧迫もお構いなし

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財務省が推進

今回の発端は9月13日だった。この日、日本郵政は個人ローン、事業ローンの開始や学資保険の見直しなど新規事業の認可申請を郵政民営化委員会に行っている。このとき民間金融機関は、郵政民営化法が「ゆうちょ銀行と既存の民間金融機関との間の適正な競争関係の構築を前提とする」と規定していることを踏まえ、あくまでも新規事業の認可は金融2社の上場と株式売却が前提になると信じて疑わなかった。

ところが、上場計画で示されたものは民間金融機関の考えていた論理とは180度違っていた。簡単にいえば、何よりも先に親会社である日本郵政の株式上場・売却があり、そのためにも金融2社の収益力改善に向けた新規事業を開始する、というものだ。おまけに、民営化委員会の西室泰三委員長も来年4月の新規業務開始に向けて年内にも結論を出すという意向を公にした。これは民間金融機関にとって驚天動地だった。

実は「金融競争のイコールフッティング」を棚上げする新たな論理が生まれていた。それが具体的に浮上してきたのは消費増税関連法案が成立した後。その論理とは「震災復興」と「財政問題」だ。

復興財源確保法は、復興財源として「日本郵政株式の処分益」を規定(附則第14条)しており、消費税率の引き上げが決定した後は、次の財政上の手当てとして税外収入の日本郵政株売却のスケジュールをいち早く確定させる動きが加速している。そこには財政を預かる財務省と政治の存在がある。

かつての「郵政vs.民間金融」の闘いでは、民間金融機関にくみしてきた財務省。だが今回は敵に回ってしまったようだ。

しかも、今の日本にとって震災からの復興と財政問題は極めて重要なテーマであることは間違いない。その二つの課題を関連づけて、日本郵政の株式上場・売却こそ最優先と突き付けられれば、民間金融機関が従来から主張してきた「政府の関与」「民業圧迫」という立て看板は説得力をそがれかねない。実際、「はしごを外された」(メガバンク)と怒りは広がっているものの、拳を振り上げきれないようなムードも漂う。

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