日本を激変させた「男性不況」とは何か? 「男性不況」が日本を変える

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男性の職場の減少は、建設業でも起こっています。

建設業は、02年に618万人の就業者を抱える大きな業種の一つでしたが、11年には473万人と、実に約145万人の就業者が消滅してしまいました。 

建設業従事者の85%以上が男性なので、この業種の就業者の減少が「男性不況」に拍車を掛けた要因の一つであることは間違いありません。事実この間、男性の建設業の就業者数は526万人から407万人と、119万人も減っています。

減り続ける、建設業の雇用

建設業で雇用が減少した第1の理由は、公共投資の縮小です。日本の公共投資は、95年の44兆円をピークに減り始め、現在はピーク時の約半分の水準にまで圧縮されています。これでは、雇用が減ってしまっても不思議ではありません。

男性不況の構造については、男性不況の中で詳細に分析されている。

公共投資の縮小に加え、少子高齢化の進展も建設業の雇用が減る一因となっています。国の人口動向は、その国の経済と深いかかわりがあります。中でも、人口に占める15歳以上65歳未満の比率を示した「生産年齢人口比率」は、建設投資との関係が非常に強いのです。

日本の建設着工床面積と生産年齢人口比率の関係を見ると、両者はぴったりと相関しています。生産年齢人口比率が増えているときは、豊かな労働力があり、従属人口を扶養する負担が軽いため、建設投資が伸びるからです。

日本の場合、生産年齢人口比率は90年代前半にピークを迎え、以降ずーっと下がり続けています。しかも、日本では今後も少子化と高齢化が進むため、生産年齢人口比率は下がり続けることが確実です。

先ほどもご説明したように、生産年齢人口比率は建設投資と相関するので、日本の建設投資も90年を境に減り続けているのです。

なぜ「女性の職場」が増えたのか

さて、製造業や建設業などほとんどの業種で雇用は減っているのですが、一業種だけ断トツに雇用を増やしている業種があります。

それが、女性の雇用を押し上げている医療・福祉です。その数は、02~11年の9年間で178万人増と、他の業種とはケタが違います。

医療・福祉分野での雇用がこのように急激に増えたのは、日本が世界に先駆けて直面している高齢化の進展が大きく関係しています。日本は他の先進国と比較しても高齢化の進展が早く、かつ将来的な高齢化率はどこよりも高くなると予想されています。そのため、医療・福祉の分野では、今後とも雇用が増えると予測されているのです。

病院にしても介護施設にしても、多くが女性スタッフで成り立っているのはご存じだと思います。病院では、ドクターの何倍もいる看護スタッフはほとんどが女性ですし、介護施設でも実際の介護の現場では男性より女性のスタッフが圧倒的に多いのが一般的です。

実際、医療・福祉の分野での男女の雇用者の構成比を見てみると、約8割を女性が占めており、その差は開く一方です。

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