新幹線に「北海道らしさ」がないのはナゼ? 東北新幹線の延伸と見紛う愛称、デザイン…

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新函館北斗駅は函館市ではなく北斗市内にあり、元は渡島大野という名称の函館本線の駅であった。それが新幹線接続駅に「大出世」したのだ。中心都市の函館に乗り入れなかったのは、札幌方面への延伸時に無理な線形にならないよう設計したためである。

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新函館北斗駅と函館駅を結ぶ「はこだてライナー」の車両(写真:c6210/PIXTA)

ただこのため、函館市中心部へは函館本線の列車への乗り継ぎが必要で、新函館北斗~函館間は、新幹線列車に接続する快速・普通「はこだてライナー」にて、最短でも15分程度かかる。確かに首都圏方面などから、人気観光地である函館に訪れる観光客にとっては、不便を感じるところだ。

「はこだてライナー」は基本的に3両編成で、混雑も懸念される。収容力はある通勤型電車なので最小限の車両数で対応しようというところか。今後は全面快速化、増発・増結が課題となる。幸い走行区間の大半は複線(函館~七飯間)なので、これを活かしたい。

乗り継ぎの利便性はさらに改良を

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新幹線駅出口のすぐ前に広い駐車場が整備された木古内駅

新函館北斗の新幹線ホームは向かい合わせの2面。現在のところ、定期列車は11番線から東京行き上り列車が出発。12番線に東京発の下り列車が到着するようになっている。

このうち、11番線は在来線の1・2番線と直結しており、乗換改札口を通れば、段差無しで「はこだてライナー」もしくは札幌行きの特急列車に乗り継ぐことができる。ただし、12番線からはいったん階段などを上がって、ホーム上の橋上駅舎内にある別の乗換改札口を通らねばならない。

利便性を考えるなら、上り下りとも11番線発着を基本に統一すれば利用客の負担は少ない。しかし、東北新幹線内や青函トンネルにおけるダイヤの制約からか、現状では上り出発、下り到着の時刻が近接している例が多く、それが難しいのはわかる。出発列車と到着列車の利用客が、さほど広くはないホームで交錯するのも問題だろう。新函館北斗駅近くには車両基地もあって、列車を一時的に引き上げることは容易なので、これも今後の検討課題としてもらいたい。

列車への接続のみならず、周囲の観光地へのアクセスを考えると、自動車、バスとの連携も必須だ。ほとんど何もなくホテルですら建設中の新函館北斗駅前に、レンタカーの店舗だけが軒を連ねていたのは、さすがというか…。

新幹線の駅は、意外に広範囲に利用客を集めるものだ。駅舎脇には大規模な立体式駐車場も完成しており、自家用車との連携も問題なさそう。駐車場の整備は木古内でも新幹線駅の出口すぐ前で広範囲に行われており、松前や江差方面などからの新幹線利用客に重宝されるだろう。

駅周辺の開発、都市化はまだまだこれから進むというところで、当面は「交通結節点」として新幹線駅を利用することが主となろう。無駄に歩かされることのない、スムーズな乗り継ぎへ向けての改良は、まだまだ続けなければならないと思う。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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