与那国島で陸自部隊約150人が任務を開始 東シナ海に積極進出する中国を監視

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米中の対立で注目される南シナ海の陰に隠れがちだが、中国は東シナ海でも積極的な海洋進出を続けている。「中国側は情勢をもう一段エスカレートさせようとしている。我々はそう認識している」と、外務省関係者は言う。「領土・主権に関わることにはますます態度を硬化させている」と、同関係者は指摘する。昨年11月には尖閣の南側海域を軍の情報収集艦が航行、翌月には機関砲を積んだ海警局の巡視船が日本の領海に侵入するなど、これまでにない動きが確認された。  

中谷元防衛相は「日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増すなかで、南西地域の防衛態勢の強化を目に見える形で示すものであり、重要な意義をもつ」と、新たな基地配備の狙いを語る。

北から南まで情報収集拠点

これまで日本の最西端の軍事拠点は、宮古島にある空自のレーダー基地だった。それより西側は空白地帯で、海上自衛隊の哨戒機と護衛艦、海上保安庁の巡視船が断続的に監視しているものの、365日24時間警戒し続けることはできなかった。   

陸自は与那国基地の具体的な能力を明らかにしていないが、反射波を利用して対象物の距離や方角を探知するレーダーでは、水平線の先にある尖閣諸島付近の海上の動きまで見通すのは難しい。しかし、電波傍受装置で相手の通信を拾うことで中国側の動きを把握できるようになる。

元陸将補で現在は日本大学で教べんを執る吉富望教授は「中国は嫌がるだろう。自衛隊が航空機や船の情報をさまざまな機器を使って集めることになり、中国の動きに変化があればすぐに分かるようになる」と指摘。「尖閣諸島で何か起きた場合の活動拠点にもなる」と解説する。

防衛省の情報本部が全国6カ所に構える電波傍受施設と合わせれば、北は北海道千歳市から南は与那国島まで、日本列島に情報収集拠点が整うことになる。

自衛隊は今後、南西諸島の他の離島にも基地を配置する。2018年度末までに鹿児島県の奄美大島に550人、宮古島に700─800人の部隊を、それ以降に石垣島に500─600人の部隊を置く予定だ。対空、対艦ミサイルの配備も計画している。

 

(久保信博、ティム・ケリー 取材協力:リンダ・シーグ 編集:石田仁志)

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