「北海道新幹線と貨物とのすれ違い」を初体感 開業日の青函トンネル、衝撃や振動は皆無!

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吉岡定点付近で貨物と2度目のすれ違いとなる。今回は、前回の列車と比べると編成長が3倍ぐらいある長大列車だが、相変わらずすれ違いによる衝撃や振動等は皆無。ただすれ違いの轟音は前回と比べて顕著であり、もしかすると複雑な微気圧波が起きているのかもしれず、この「すれ違い問題」は一筋縄ではいかないことを感じる。

この頃までには車両は温まって、窓の曇りもいつの間にか消えていた。すれ違い減速のせいか、28分ほどを要したトンネル通過を経て、車窓には北海道の風景が突然広がる。3月26日のこの日も、晴天の下ではあるが一面の雪景色。線路の両側には、まだ蓄雪の名残りがあり、改めて寒冷地の環境の厳しさを実感する。

厳重な防雪シェルターに保護された三線分岐器を通過し、やがて在来線が両側に分かれていくと木古内駅に停車。この間、線路の両側には地元の人々が出て、あちらこちらで歓迎の手を振っている。木古内からは新幹線専用軌道に戻るが、トンネル区間も多いために「どこを走っているのだろう?」という不思議な感覚がある。

やがて明かり区間に出て景色が開けると、少し先には上磯のセメント工場、その向こうには函館山の全景が浮かび上がり、その両者を遠近感として函館と北斗の都市圏全容が浮かび上がる。

多くの乗客は、ここでようやく「北海道に来た」という感慨を抱くのではないだろうか。と思うまもなく、アナウンスが入り大きく左カーブをしながら車両基地を右手に車両は新函館北斗の駅に滑りこんだ。

函館アクセス列車は大混雑

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開業日とあって大混雑の新函館北斗駅

開業初日、しかも初便と第2便の到着直後とあって、新函館北斗駅も「函館ライナー」も大混雑、いや混乱状態といってよい喧騒の中にあった。

この「函館アクセス」問題、そして、肝心の集客効果や経済波及効果については、5月の連休が一つのメドとなるだろう。開業と同時に明らかとなった問題点は修正しながら、ゴールデンウィークでは多くの観光客に満足感を持ってもらうように心がけて欲しいものだ。

大成功と言われる北陸新幹線も、その成功は決して保証されていたものではなく、開業後の「口コミ効果」が大きかったからだ。

函館への普通列車の車窓からは珍しい光景を目にすることとなった。函館運輸所には北斗星塗装のDD51形ディーゼル機関車5台、緑の旧「スーパー白鳥(789系)」が7編成並んで留置されていた。それぞれ、青函トンネルの花形から退役し、一時の休息をしているわけだが、その姿は青函トンネルに新しい歴史が始まったことを表していた。

冷泉 彰彦 作家

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れいぜい あきひこ

1959年生まれ。東京大学文学部卒。米国在住。『アメリカは本当に「貧困大国」なのか』など著書多数。近著に『「上から目線」の時代』(講談社現代新書)。

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