事実!日本人の「買物欲」は衰えていなかった ではなぜ「モノが売れない時代」と嘆かれる?

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この現象を、買物研究所では「欲求流去(よっきゅうりゅうきょ)」と名付けた。この「欲求流去」という現象の実態を詳しく把握するため、私たちは2016年2月に全国の20~60代の男女・計2063人を対象にした「欲求流去実態調査」を実施している。

これは「この半年間を振り返り、ある商品を“欲しい”と思ったにも関わらず、いつの間にかそのことを忘れてしまったり、欲しいという気持ちをなくしてしまった経験はありますか?」という質問をきっかけに、「買い物意識」「情報意識」「欲求流去のプロセス」を明らかにするものだ。

その結果、この半年間で「欲求流去」を経験した生活者は75.1%に上った。そのうち約7割が「この1~2年で欲求流去する経験が増加している」と回答。近年の情報増加の中、欲求流去経験も高まっていることがわかった。

年代やSNS習熟度は「欲求流去」に関係する?

では、どんな人が欲求流去を経験しているのか。経験者を性・年代別で見ると、20代女性がやや多いほかは、どの年代の人も、おおむね7割から8割の人が「この半年以内に欲求流去を経験している」と回答しており、性年代別に大きな差は見られなかった。

情報増加によって「欲求流去」に拍車がかかったのだから、スマートフォンやSNSの利用時間と相関があるのか。その点も分析してみたが、スマートフォン、SNS、メッセージアプリの使用有無、使用歴に関わらず、欲求流去を経験した人の率はいずれも7割以上と高水準なのである。

全年代、全国民的に起きていることがわかってきた「欲求流去」。この現象とどう向き合っていけばいいのかを探るべく、次回は「欲求が流れがちなタイミング」をキーワードに、考察を掘り下げていきたい。

山本 泰士 博報堂買物研究所 ストラテジックプラニングディレクター

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やまもと やすし / Yasushi Yamamoto

 

2003年、博報堂入社。マーケティングプラナーとして教育、飲料、自動車、トイレタリー、外食などのコミュニケーションプランニングを担当。2011年より生活総合研究所にて未来洞察コンテンツの研究・発表を担当。「総子化」「インフラ友達」「デュアル・マス」などの制作・執筆にかかわる。2015年より現職。

博報堂買物研究所は、企業の「売る」を、生活者の「買う」から考え、生活者の“買物”の構造・実態を多角的に分析し、ショッパーマーケティング・ソリューションを提供する実践型組織です。

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