『弁護士、闘う』を書いた宇都宮健児氏(弁護士)に聞く

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--消費者金融の金利引き下げ運動は画期的でした。

私がサラ金事件を手掛け始めた頃は年100%の金利が当たり前だった。この金利は、当時109・5%を上限にしていた出資法に基づく。出資法は上限未満にしないと処罰される。

もう一つ、これ以上取ると無効だから払わなくていいとする利息制限法もある。ただ、利息制限法は罰則がないから、出資法の金利との間のグレーゾーン金利でサラ金業者は営業し、出資法の上限に近いところの金利が現実はほとんどだった。

これは法改正運動で少しずつ下がり、2006年の抜本改正でグレーゾーンがなくなって、20%が上限になっている。この金利引き下げ運動をやるときに、相手は巨大業界であり、政治団体をつくって与野党問わず献金する。つねにグレーゾーンが残ってきたが、30年近い運動を経て、06年に一気に撤廃された。運動の輪が大きく広がった結果だ。

ただ、これは逆に深刻な被害の裏返しだ。今およそ1000万人以上の人がサラ金を利用していて、200万人を超える人が返済に行き詰まっている。警察の発表によると7800人が経済生活苦で自殺する時代だ。

--金利軽減は抜本策にならない。

多重債務者の中には自殺ばかりでなく夜逃げもかなり多い。夜逃げの際、住民票を移動しないで逃げる。移動して逃げると居場所がわかってしまうからだ。事実上住民票なしでは、就労が不安定になる。健康保険にも入れない。その結果、ネットカフェで寝泊まりしたり、路上生活を余儀なくされる人がだいぶ出る。

サラ金とクレジットを規制する法律が大改正されても、利用者の低所得とか貧困の状態は解消されない。つまり、貧困の問題を解決しないと多重債務問題も根本の解決にならない。そこで、07年に反貧困ネットワークを立ち上げ、その延長線上に年越し派遣村の活動があった。

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