政権交代で再生する日本のデモクラシー--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

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だが、そうした大混乱があったにしても、韓国と台湾の民主主義は活気にあふれているように見える。また、日本人や他のアジア人は文化的な理由から政治的な競争を嫌うという主張は、歴史的に見て正しくない。

日本の歴史は紛争と反乱に満ちている。日本はアジアで最初に複数政党制を確立した国である。

戦後初期の日本政治には、大規模なデモや戦闘的な労組や活発な左翼政党が存在し、混乱に満ちていた。そのため、そうした混乱から政治を切り離し、一党支配を作り出そうとする意図的な試みがなされた。イタリアと同様に、日本は冷戦の最前線に置かれていたため、アメリカ政府だけでなく、民主的な保守主義者も、左派や共産党が政権を掌握する事態を懸念していたのだ。

つまり、一党支配は文化的な理由からではなく、政治的な理由から50年代半ばに出来上がったものである。具体的には、一部アメリカの資金援助を得て設立された保守合同政党が、左派の反対政党を隅に追いやった。その際、組合潰しのような強引な手法も採られたが、中産階級は「物質的な繁栄を保証される代わりに、政治的に従順になること」を受け入れた。言い換えれば、“自民党国家”は池田勇人内閣による「所得倍増計画」をベースに成立したのである。

その結果、影響力を失った野党は一党支配の単なるお飾りとなってしまった。そして、一党支配は自己満足と腐敗と政治的な動脈硬化を生み出し、過去10年間、自民党とかつて全能を誇った官僚が無能さを露呈し始めたのである。

小泉純一郎元首相は2001年に改革を約束することで自民党に最後のチャンスを与えた。しかし、小泉元首相が何をしてもすでに手遅れだった。経済危機に直撃された中産階級の堪忍袋の緒が切れたのだ。

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