ネット通販「即日配送」の不都合な真実 超速便が思わぬ無駄を生んでいる

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また、最近のある研究では、デラウェア州ニューアークにおけるインターネット・ショッピングの環境への影響が検証されたが、住民によるネット・ショッピングの利用拡大に伴って、路上にはトラックが増え、温室効果ガスの排出も増えているという。デラウェア大学教授で土木工学を担当するアルデシ・ファグリは、さまざまな排出ガスは2001年から2011年の間に20%増加したと話す。「その原因としてはいろいろ考えられるが、ネット・ショッピングとその配送のためのトラックの増加が大きな理由のひとつだと思っている」。

同教授は「ネット・ショッピングは環境を改善しているのではない。悪化させている」と言う。

即日配達のために効率化が困難に

ほかの研究者も、少なくとも現在は、インターネット・ショッピングは実店舗での買い物を補完するものであり、代替するものにはなっていないと話す。

レンセラー工科大学の准教授で輸送に関する問題を研究するカーラ・ワンは、「オンラインで買い物をする人は、実物を見たり触れたりしたいとも考える。それに、彼らは返品もする」。

ワンらは、特に即日配達の要求により、運送会社が効率的に配送することが難しくなっているという。いまでは、一軒の小売業者に大量の荷物を届けるのではなく、あちこちバラバラに配達することが増えている。

たったひとつの荷物を運んでいるドライバーも多い。ポストメイツの場合は特にそうだ。同社は1万5000人のフリーランスのドライバーと契約しており、彼らは顧客から依頼されれば何でも運ぶ。いわば、配送においてウーバーのようなサービスを行っているのだ(同社によると、混雑した都市部では自転車や徒歩による配達を行っており、配達人は5000人いるという)。

シンプルな解決方法

リサイクルのプロセスも実は環境に負担をかけている(写真:Jim Wilson/The New York TImes)

消費者はリサイクルを行うことで環境に配慮している気持になれるが、リサイクルのプロセスも環境に負担をかける。リサイクルセンターに運ぶまでに排出ガスも生じるし、リサイクルセンター自体が大量のエネルギーと水を消費する。

イリノイ大学教授で、経済と環境の問題に詳しいドン・フラートンは、考えられる解決方法のひとつとして、小売業者に箱を回収する責任を持たせることを挙げる。そうすれば、小売業者も包装を減らす方法を考えるだろうという。「箱の中に箱、そのまた中に箱、という包装はしないことだ」と彼は言う。

サンフランシスコにある大手リサイクル会社、リコロジーは、毎日100トンの段ボールを回収している。同社で広報を担当するロバート・リードはもっと簡単な解決方法を提案する。「そんなに買いまくらないことだ。もっと落ち着こう」。

(執筆:Matt Richtel記者、翻訳:東方雅美)

© 2016 New York Times News Service
 

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