トヨタが雇った再建屋は日立出身のセールスマン 名古屋グランパスGM・久米一正【下】

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発奮した玉田は調子を取り戻し、08年3月に代表復帰。今や代表に欠かせない選手の一人になった。久米は“部下”の躍進にほくそえむ。

「僕からすると、玉田は技術屋なんですよ。製造業でもサッカーでも、技術屋はプライドが高い。彼らをヨイショして、その能力を引き出すのが事務方の仕事の一つだと思います。カギとなるのはプライドを傷つけないで、どうやって技術を引き出すか。GMって精神科医みたいなものなんですよね」

「チャラチャラしたやつにろくな選手はいない」

同時に、久米と選手たちの関係は、金八先生と生徒のようでもある。たとえば今季の合宿でのこと。ミーティングにおいて、久米ははしの例え話を出した。

「皆さん、1メートルのはしがあったら、目の前にあるおいしい料理をどう食べますか? はしが異常に長いので、ただ料理をつまんでも口元に持って来られませんよ」

答えは単純明快。互いのはしで料理を食べさせ合うのだ。自分の口には運べなくても、誰かの口には運ぶことができる。

「去年は3位になった。だから、今年はもっと相手のマークも厳しくなる。簡単には勝てなくなるぞ。そういうときに大切なのが、互いに助け合うことだ。その気持ちがないと、今年は勝てない。だから苦しくなったとき、このはしの話を思い出してほしい」

このスピーチからもわかるように、久米は選手としての能力以前に、人間性を大切にするGMだ。

「私は選手を獲得する前に、必ずあいさつができているかを見ます。チャラチャラしたやつに、ろくな選手はいません。一般の人たちから『サッカー選手って清潔感があるね』と見てもらえるようになれば、自然に選手としての風格や品格が生まれてくる。そうすればきっとサッカーの神様が降りてくる」

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