最新!「保活難民」にならない自治体はここだ 就労と保育の「卵か鶏か」問題に挑む街

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「待機児童数としてカウントすらされていない『そもそも働くことを諦めていた女性たち』が大勢いると実感した」

と言う。ママスクエアは現在、埼玉県越谷市、川口市などにもあり、仕事内容は店舗により異なる。今後4年で全国100店舗への拡大を目指すという。

延長保育→多様に働く

「職住接近」をかなえる施設は、世田谷区にもある。「マフィス馬事公苑」は、保育サービス付きの民間シェアオフィス。利用者は利用料を支払ってデスクを借り、常駐の保育スタッフに子どもを預けて持ち込みの仕事をする。ウェブデザイナーや翻訳家など、フリーランスで働く地元の女性が多い。認可保育園に入りづらかったり、「子どもが小さいうちは自分で育てながら、できる範囲で仕事をしたい」と希望したりする人たちだ。午前中だけ、週3日だけといった形の利用が多い。

「フルタイムで働いて保育園か、完全に仕事を休むかの二択ではなく、いい案配で、無理なく仕事を続けられる場所を作りたかった。『地元で仕事も子育てもできて、たまに都心に通う』という価値観を定着させたい」

と、マフィスを運営するオクシイの高田麻衣子社長は語る。

共同調査で首長に「子育てしながら働く世代が住みやすい街づくり」の工夫を聞いたところ、「ワーク・ライフ・バランス」に言及した市区長が8人いた。画一的な働き方に合わせた保育サービスを提供するだけではない、新たな視点が生まれている。

前出の普光院さんは、働き方の見直しが保育の量や質の改善につながる、と指摘する。

「そもそも夜9時まで延長保育をしている状況は異常。日本の働き方は滅私奉公的で親の労働時間が長い。だから一人ひとりの保育時間が長く、多くの人に保育が行き渡らないことにもつながっている」

延長保育の時間を長くする時代は終わった。求められるのは、多様な働き方に応じられる、柔軟な子育て支援だ。

(ライター・柳澤明郁/編集部・小林明子)

※AERA 2016年3月28日号

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