北海道新幹線の平均乗車率はたったの25%!? 収入維持へ「お得なきっぷ」はネット限定販売

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北海道新幹線の乗車率は25%と予想されている。空席を減らすにはお得なきっぷを買いやすくすることが重要だ

しかし、航空に対して競争力をもつカギは、鉄道の魅力を十分に生かしたきっぷを作ることにある。企画乗車券がインターネット発売に限定されるようでは、北海道新幹線の魅力を向上させることは難しいのではないだろうか。

申込日に制限はあっても、駅でも企画乗車券を買えるようにすることが、長期的には北海道新幹線の乗車人員増につながるだろう。

旅客と鉄道の最も重要な接点の一つは、駅の窓口である。窓口で企画乗車券を発売することこそ、北海道新幹線の魅力を高める最大にして最強の方策ではないだろうか。

空席のままでは価値がない

鉄道は乗車人員に関係なく発生する固定費の割合が大きい産業である。北海道新幹線の場合も、74%を空席のままで走らせても価値は生まれない。元々収入を見込めない空席をそのままにするのではなく、思い切った値引きで航空に対する競争力を高める必要がある。

また、鉄道の強みである途中下車制度も活用して、東北周遊もできる途中下車可能な企画乗車券も発売することも一案である。航空は途中下車ができないのに対して、途中下車は鉄道だけのアドバンテージである。実際、旅行会社も東北と函館の両方を周遊する北海道新幹線のツアー商品を販売している。

そして、団体列車となる寝台列車「カシオペア」ともタイアップさせ、片道北海道新幹線+片道寝台列車の旅行商品の発売も検討に値する。訪日外国人をさらに増やす上で、寝台列車は重要な観光資源となりうる。

新幹線と寝台列車を組み合わせる旅行の提案は、訪日外国人はもちろん、日本国内でも強力なPR材料とすることができると考えられる。新青森で接続するJR東日本のリゾート列車「リゾートしらかみ」「リゾートあすなろ」などとのとのタイアップを強化する必要もある。

また、北海道には大沼公園などの美しい観光地がある。大沼公園や太平洋などの車窓を楽しめるリゾート列車の運行も検討の余地がある。

日本政策投資銀行によると、北海道新幹線開業によって、2010年比で、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県から北海道への観光入込数は144%増、宮城県からは237%増加することが予想されている。

北海道新幹線の乗車率を上げることは、北海道の活性化にも寄与することはもちろん、首都圏や東北地方の活性化にもつながる。首都圏や東北地方から北海道への誘客を図るだけでなく、北海道から本州への誘客もまた促進する必要がある。北海道と関東地方・東北地方の自治体が連携して、北海道新幹線を利用した観光をPRすることが求められるところである。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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