(第3回)<小林崇さん・後編>いつかツリーハウスを使って学校のようなものを作りたい

(第3回)<小林崇さん・後編>いつかツリーハウスを使って学校のようなものを作りたい

●「教師も人間」なのだ

 親父が同じ中学校の教員だったし、小学校の時にはお袋が養護教員で同じ学校にいました。学校の先生達が自分の父のところに集まることもあり、「先生」といえどもそこでは生の人間で、酔っぱらったりもするわけです。当時は先生同士で飲むのも当たり前で、そこに卒業生などもいて一緒にお酒を飲んだりしていました。
 親父はのんべで、最後は酒で死んでしまったような人。酒場で飲んで暴れて呼び出され、迎えに行ったこともあります。まだ当時は大らかだったから、「小林先生はしょうがないな」と容認され、親父も町中でもどこでも飲み歩いちゃうのだけど……今ならとんでもないことになるのでしょうね。
 飲んでいないときはいい先生で、生徒からも慕われている。だけど、飲むといろんなことが出てきて、自分の今の人生に満足していないという感じでした。そういうことで母親ともめていることもあり、母は、親父が飲んでるときは静かにしているけど、しらふのときに意地悪を言ったりする。両親の言ってることがいつも違うなと感じていました。だから、友達の家に遊びに行くことが多く、そこには、田舎の「おとうちゃん」と「おかあちゃん」がちゃんといた。「食べていきな」と、何でも作ってくれたり、花札をしていたりするけど、ものすごく「親父」っぽかったり、潜り方がうまかったり、なんだかカッコよくて。自分の両親といえば、学校の先生といいながらもうまくいってないような……。そういう風に見てきたので、「学校の先生」というものを、社会的な目でみるものとは違った大きなギャップを感じていましたね。

 親はしがない学校の教員で、自分は教員になるのは嫌だった。漠然と何か違うものを、少なくても今、小さい自分が見えている周りの世界はあんまり楽しくない。だから出るしかない。どこか知らない世界に……そんな気持ちでいました。  伊豆には黒船祭りというのがあり、下田まで行くとドルで飲める喫茶店もあった。その先に行けばアメリカみたいなものがあるのかな……と。この白い砂浜の先に行くと、何か自分に答えてくれるようなものがあるような気がして、今自分が知っている社会だけがすべてではないだろうということを漠然と考えていましたね。

 その頃、「素晴らしき世界旅行」や「兼高かおるの世界旅」などというテレビ番組がありました。その放送を楽しみに、「なんだろう、これは。こんなものが同じ時代にあるんだろうか……」と、言葉や肌の色が違ったり、いろんな生き物がいたり……。「こんなのあるのか? この人たちは何をしているんだろう。兼高かおるって誰なんだろう? どうやったらこんな風になれるんだろうか?」と、これが日芸(日大芸術学部)に進むモチベーションになり、そういうクルーになりたいと思うようになりました。

●30代過ぎてようやく出合えた自由

 人間の表と裏の姿や、社会のギャップ、不平等感を抱えたまま、大学に進み、社会に出てみたけれど、社会はまた同じ。ここでも、ルールはあり、全然平等なんかじゃなかった。自由ではない。メディアの会社に入ったからといって、兼高かおるになれるわけではない。世界はどれだけあるのか。自分の目で確かめてみたいと世界各国に旅立ちました。

 その後も、フリマやウエイター、鉄工所勤めや期間工、DJみたいなこともすれば、雑貨や古着の輸入や販売もした。ヤンキーみたいな時代もあり、30歳を過ぎてもまだ「夢」なんていっててどうするのか? 本当にあるの? なかったらどうするの? そんな風に言われ続けていました。みんなどこかで妥協ではないけど、それなりの幸せや満足の大きさを自分で選ぶことが人生じゃないのかと言われたこともありました。自分でも心配になり、おどおどしたり、不安で夜も眠れないこともありました。確実な人生もあるし、会社に勤めたこともある。いろんなことをしたけど、どれも自分は嫌で合わない。それが、30代後半になってから、ツリーハウスに出会い、自分にとって自由なものを得られた。もしかしたら、自分が勝手にそう結びつけているだけなのかもしれない。けれど、ずっと探していたものが、表現をできるものがあったのです。

 まだそれに出合う前、そういうものを探し続けている間、子どもっぽい自分を保つということは、本当はとても面倒くさい。ようやくツリーハウスに出合えたときにはものすごく身体が楽になりました。

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