(第4回)<高木美也子さん>「この先生にはかなわない!」先生は、生徒が尊敬できる何かを持っていた

(第4回)<高木美也子さん>「この先生にはかなわない!」先生は、生徒が尊敬できる何かを持っていた

TVでおなじみのコメンテイターとして活躍する高木美也子さん。日本とフランスの大学で、生命科学や生命倫理の研究をつきつめ、大学で教鞭をふるっている。京都から東京の小学校へと転校してきた体験や中学時代に出会った生物の先生、フランス留学中に感じた日本との違い、そして現在教壇に立ち学生を見て思うことなど、たくさんの体験談と独自の見解を伺いました。

●いじめるか、いじめられるか。中立はいない

 小学4年生までは京都の学芸大(現、京都教育大)付属小学校に通っていました。ここはものすごくのんびりとしていて、スポーツも盛んでした。卓球台がたくさんあったり、冬はスキーやスケート教室もありました。教育大だから、教育実習生の大学生がしょっちゅう来ていて、勉強もするけど、半分は遊んでいましたね。
 父の転勤で東京の公立小学校に転校したのですが、なんだかものすごく意地悪で……。すごく嫌なところだなという印象でした。いじめるか、いじめられるかのどちらかで、どちらにも関与しないというのがないのです。まずはいじめられて、何なのだろう?と思って。そのうち、ある程度勉強ができればいいとわかりました。勉強ができるとわかるとなんとなく認められてくるんですね。いじめられないためには、いじめる側に回らなくちゃいけなくて、これがものすごく居心地悪かった。
 このまま上の中学校にあがるのは嫌だと思い、私立の中学校を受験して、青山学院の中等部に行きました。

●知らないことを知っている先生を尊敬していた

 先生の思い出といえば、青山学院の中等部は、ものすごくユニークな先生がたくさんいました。生物や美術の先生にしても、その分野ではとても高名な方らしいのですが、そんな人が中等部で教えている。教えることがうまかったかどうかはわからないし、変わり者ではあったと思います。しかし、何かに秀でている「プロだ」ということはみんなわかっていて一目置いていましたね。たとえば、生物の先生でいえば、植物分野ではよく知られた人で、「この花は何で、この木は何」と、どの草花を見ても全部名前を言えるんですよ。中学生に対してすごくエッチなことを話したりもするのですが(笑)、でも、そんな秀でた一面があるからやはりすごい先生だって敬意を抱くことができましたね。
 今は、先生に対して生徒が「この先生にはかなわない!」っていうところがあまりないんじゃないかと思うのです。教師も画一的な感じがします。いつも、怒っていたり、どうしろと要求しているだけで。生徒が、あの先生はすごいなと尊敬の気持ちを持てるかどうかが大切だと思うのです。

●人種の相違、エリートと非エリート

 私は、高校二年生から理系のクラスに進んでいました。不思議と理科や数学の先生が担任となることが多く、理系に進学するよう薦められましたし、中学生の頃、お小遣いをためて顕微鏡を買いました。そういう世界に興味があり、資質は既に持っていたのかもしれません。
 大学に進学し、理系に進むと、ここははっきりと男社会。そういうのも息苦しく感じていたのと、自分の研究テーマであったDNAの先端が学べるのはパリだということで留学しました。研究はみなそうですが、実験をしてもきちんと結果が出るかどうかはわからない。未知数です。結果が出ないとマスターもドクターもとれず、そうかといって、結果が絶対に出せるという訳でもない。だから常に不安です。この点は日本よりも厳しかったと思います。
 パリの大学には、教授も学生もさまざまな人種の人がいて、日本では意識しない人種の違いなども意識することがありました。友人に、 「自分はユダヤ人だからつきあいたくなければこれ以上つきあわなくていい」 と言われたことがあり、これには驚きました。「私たち日本人には、ユダヤ人だから、フランス人だから、アラブ人だからどうのという感覚はないよ」と話すと、「だったらよかった」と言われたりしましたね。
 また、日本で大学生の頃は進路が見えなかった。ある程度の結果を出さないと上に行けないし、男性社会であったし、実験は頭+体力。実際に結婚や出産を機にやめてしまう人が多かった。自分が研究者になれるのかということもわからなかった。
 その点、パリで出会う女性研究者の先輩はオシャレでとても素敵だった。フランスではキュリー夫人の影響なのか、高校の化学・物理の先生の約8割が女性。日本や他国でもこの率は比べようにならない多さです。
 日本では研究や実験をしていると、夜遅くなったり、研究室に泊まりこんだりすることが多いけど、パリではみな7時くらいにさっさと帰ってしまう。たとえば、実験を終えた後、一度の実験で試験管を200本くらい使うのでそれを洗わなければならない。フランスではその専門職がいて洗ってくれる。フランスのほうが、エリートと非エリートがはっきり決まっていて、格差社会といえばそうかもしれないけど、それぞれがプロとしての意識を持って楽しそうに仕事をしていた。日本では、「いつか這い上がっていこう」といった野心があるのかもしれないけど、試験管を洗っているおじさんたちにはそんな気がなく、「次のバカンスはどこに行こうか」なんて話ばかりしていて、仕事もとても楽しそうにしていました。

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