赤字の三越が人員削減、出口が見えない百貨店不況

拡大
縮小


組織再編前の人員減

こうしたスリム化を進めるのは、三越伊勢丹HDが昨年、今年に発表した店舗体制の再構築策と表裏一体である。

今後、「三越」「伊勢丹」という互いの看板は維持するが、従来の本店・支店関係は11年4月までに大幅に変わる。具体的には、伊勢丹新宿本店や三越日本橋本店・銀座店を中心とする「都心店グループ」が三越伊勢丹HDの本丸となり、地方支店はエリアごとに事業会社化。組織再編に伴って、多くの人員が地域事業会社へ転籍し、今後は給与体系も別々となる可能性が高い。新組織の移行前にできるだけ負担(人件費)を軽くしておきたい、との会社側の意図が見え隠れする。

年齢によるが50歳代の三越社員が早期退職すると、「上乗せ」は1000万円を超えるという。関係者によると退職金の平均支給額は2500万円前後で、社員の平均年収が600万円前後。仮に退職が1000名となれば最低でも250億円必要だが、池袋店の売却金(約750億円)もあり原資に特段の懸念はない。一方で年間60億円の人件費負担が減り、黒字化にメドが立つとの勘定もできる。

会社側の思惑どおり、どこまで人員減を進められるのか。百貨店不況の出口がまるで見えないだけに、その結果は業界最大手の業績を大きく左右することになる。

(福井 純 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

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