ポスト京都を担えるか、温暖化対策「鳩山構想」の影響度

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 一方、鉄鋼や電力などCO2排出量が多い業界はかねて「25%削減は国際競争上、非常に厳しい」(新日本製鉄の宗岡正二社長)と民主党の目標値を牽制してきた。仮に25%が義務づけられた場合、日本エネルギー経済研究所などの試算では、国内の粗鋼生産量は現時点の生産能力比12~18%の削減を求められる。産業界の理解を得るには、国際的な公平性が欠かせない。

途上国支援がカギ

13年以降の新たな国際的枠組み(ポスト京都議定書)をめぐり、COP15での合意を目指して国連の作業部会などで交渉が続いている。中国、インドを含む途上国は、先進国により踏み込んだ削減を求めており、専門家からは「25%は途上国が反応するギリギリの水準で、合意に向け一歩前進」と評価する声が上がる。

だが「ポスト京都」の最大の注目点は、大量排出国でありながら京都議定書に批准しなかった米国と、削減義務を負っていない中国など途上国が参加する国際的枠組みの構築にある。そこでのカギは途上国を巻き込むための資金協力や技術供与の具体像だ。鳩山代表は7日、「鳩山イニシアチブ」と称して途上国の支援策を検討すると表明。環境行政に詳しい21世紀政策研究所の澤昭裕研究主幹は、「欧米は日本の削減幅より途上国支援の中身に注目する。新政権は支援額を明示するなどして議論を主導すべき」と語る。

産業界では京都議定書は日本に不利な「不平等条約」との批判が強い。鳩山代表もポスト京都で「公平かつ実効性のある国際的枠組みの構築を目指す」とするが、国際交渉の場で一翼を担えるか。22日、新首相はニューヨークの国連気候変動首脳会合に出席する。そこでの演説内容が次なる焦点となる。

(野津 滋、猪澤顕明 撮影:尾形文繁=週刊東洋経済)

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