青木&倉本会長は男子ツアーを再興できるか 過去のしがらみを捨てなければもう先はない

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別れたことで独立前までは「PGAツアー」という名称だったツアーも、その商標を使えなくなった。なじみがあった名称を使いたかったのだが、商標権は「有償」ということもあり「ジャパン・ゴルフ・ツアー」になった。プレーしている選手はPGAでもJGTOでも同じなのに、組織としてお互いの意地もあったのだろう。プロゴルファーのツアーで「プロ」を名乗っていないのには、そんな経緯がある。不思議に思っていた人もいるだろう。

年月が過ぎて、今は「PGAツアー」という呼称を「無償」でJGTOのツアー名称として使用できるという理事会決定もすでにしている。PGAとしては、一般ゴルファーはもとより、社会的にも「PGA」という名前を浸透させたい。

倉本会長が昨年公表した「ゴルフ業界再活性化への提言」で、PGAがゴルフ界活性化へ主導権をとろうというときに、一般の人に「PGA? 何?」と思われては、進むものも進まない。露出機会は多いほうがいい。知名度、わかりやすさは必要だ。昨年は「PGA」を強調するテレビCMも作った。十数年前とは反対に「あとはJGTOが決めれば、こちらは問題ない」と倉本会長もいう。かつて自分たちが使えなかった名称を、PGA会長として使ってもらおうというのも因縁だ。

2人の会長に与えられた命題

青木と倉本の会長職が、ゴルフ業界では「逆じゃないの」という声もある。PGAからJGTOが独立したときに先頭に立っていたのが倉本PGA会長だし、PGA主管のシニアツアーを長らく支えてきたのが青木JGTO会長。こちらもおもしろい巡り合わせでもある。

「名前ぐらいどうだっていいだろう」と思われる向きもあるだろう。「名前より中身だ」というのはごもっとも。「JGTOがPGA(Professional Golfers’ Association)を使うのは変でしょ」というのもその通り。 ただ「PGAツアー」という世界の共通語になっていない日本男子ツアー。その辺は目をつぶって、「PGAツアー問題」は、2人の会長がまず手をつける仕事になるかもしれない。

その先には名称だけではなく、再びツアーを一緒にやるという選択肢も見えてくる。公益社団法人(PGA)と一般社団法人(JGTO)なので組織統一は難しいとしても、興行としてのツアーを再構築する契機になるかもしれない。今のツアーは過去のしがらみをひきずっていて、興行としては成り立っていないことはすでに紹介した。

日本では政権も離合集散を繰り返しているのだし、本気で考える機会、考えられる会長になったと思っているのだが。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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