1億本突破!「い・ろ・は・す」はナゼ売れるのか?《それゆけ!カナモリさん》

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 環境負荷だけではない。マイボトルで浄水した水道水を飲んだ方が、「増量でお得」よりも、もっと自分の財布にやさしい。最近急増している「マイボトル派」なら、そんなことをすぐに考えつくだろう。

 「い・ろ・は・す」のポジショニングを二軸のマップで描いてみれば、縦軸がお得感、横軸が環境負荷軽減への貢献となるだろう。「増量でお得で、一番省資源でリサイクルに適したボトル」はミネラルウォーター同士の競合環境では一番有利になる。しかし、「マイボトル」とは比べるべくもない。

 筆者も「マイボトル派」で、SIGのボトルにブリタで浄水した水道水を入れて持ちあるっている。だが、正直白状してしまうと、面倒でなかなか実施に踏み切るまでには時間がかかった。実際にはそんな人は多いはずだ。

 「い・ろ・は・す」の売れる理由。それは、「マイボトルほど面倒なことはしたくない。けれど、環境負荷軽減に関してはやはり気になる」というターゲット層が多いからだ。無理なエコは続かない。何よりLOHASという思想は、「ムリせず継続できること」を重視するものでもあるのだ。その意味で、ターゲット層のニーズをズバリとらえたポジショニングを実現している。

 では、急増中の「マイボトル派」がさらに増えたら、「い・ろ・は・す」にとって大きな脅威となるか、ターゲットの成長性はなくなってしまうのかといえば、その点も心配はないだろう。マイボトルを何本も持ち歩けないし、時には忘れたり、荷物が多くて持てないこともある。そんな時には「マイボトル派」も「い・ろ・は・す」を選択することになる。

 マクロ環境・競争環境・ターゲティングとポジショニング・4Pがきれいに整合したことが、「い・ろ・は・す」の快進撃の理由だろう。「それゆけ、次は2億本」というところか。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年9月11日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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