【産業天気図・自動車】補助金効果は一瞬。追うほど彼方に揺れる台数回復の蜃気楼

予想天気
  09年10月~10年3月    10年4月~9月
 
 人工的な浮揚策にはやはり限界が来る。
 
 昨秋に自動車危機が勃発して以来、世界各国はつぎつぎと新車購入奨励政策に打って出た。最大マーケット米国もようやく7月下旬から新車購入助成金制度を開始。燃費の悪い車から良い車への買い換えに最大4500ドル(約42万円)を支援するというもので、開始直後から申しこみが殺到。急きょ予算を追加する事態となった。
 
 この結果、米国の8月新車販売は前年同月比1%増と、22カ月ぶりにプラスに転じた。開始から約1カ月で制度は終了したが、この間、計30億ドルを投じて69万台分の買い替え需要を生み出した。

メーカーは官製バブルをつかの間享受した。例えば補助金期間中もっともよく売れた車はトヨタ自動車<7203>のカローラで、会社別の販売シェアも19.4%とトップだった。あるいは、米国売上比率の高いホンダ<7267>の8月の現地販売台数は14%増と、単月としては歴代2位を記録した。一時は100日を超えた在庫も25日へ急激に減少し、オハイオ、アラバマ、インディアナ、カナダの米州4工場で休日稼働を再開している。

ただ、米国の失業率は高止まりしており、消費の本格的な回復はみられない。追加的な政策がなければ9月は反動減を食らうことになるだろう。
 
 9月に入ると、ドイツでも補助金制度が終了した。ドイツの場合は、9年以上乗った古い車の廃車して新車に乗り換えた場合に2500ユーロを補助する制度で、年明けの開始から200万台分の需要を創出した。ただ、新たに売れた車の大部分は1万ユーロ以下の小型車で、その余波で中型車が値崩れするなどマーケットがゆがんだ。補助金剥落後の販売動向が心配される。

日本でも4月にエコカー減税、さらに6月から経年車買い替え補助金制度が追加された。W(ダブル)の効果で、8月の新車販売台数は0・5%減と前年並みの水準に持ち直した。このうち補助金は2010年3月末で期間満了となり、それ以前でも3700億円の予算を使い切れば終了となる。
 
 期間3年のエコカー減税についても、新たに政権を握った民主党の政策しだいでは予定通り継続されるか分からなくなってきた。民主党の本願は「旧道路特定財源の暫定税率撤廃」であり、他施策のプライオリティは低くなると見られるからだ。
 
 政府からの補助がなくなった世界を、各メーカーはどう生き延びるのか。補助金と同じ額を販売奨励金として出せば台数急減は避けられるかもしれないが、身銭が切れる会社はほんの一握りだろう。それができなければ、事業規模を縮小するしかない。大規模な工場閉鎖、もう一段の業界再編が現実のものになる日はきっと来る。

(高橋 由里)

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