まれびとたちの沖縄 与那原恵著 ~沖縄との出会いが「ドラマ」を生み出す

まれびとたちの沖縄 与那原恵著 ~沖縄との出会いが「ドラマ」を生み出す

評者 映画監督 仲倉重郎

 「まれびと」とは「客人」のことである。沖縄を愛し、沖縄を訪れ、沖縄との出会いがドラマを生み出した「まれびと」たちが、本書の主役である。

まずは、1883(明治26)年、沖縄唯一の中学校に赴任した田島利三郎。180センチメートルの巨漢で髭面の新任の国語教師は、たちまち生徒を魅了する。後に「沖縄学」の父といわれた伊波普猷(いはふゆう)もその一人である。だが上層部、ことに校長とはそりが合わず、わずか2年で罷免される。

田島は古謡を採録した「おもろさうし」を発掘し、その古謡から琉球の歴史をひもとこうとした。志半ばで沖縄を去るにあたって、後を伊波に託す。伊波はその遺志を確実に受け継ぎ、「沖縄学」が生まれた。

音楽学者の田辺尚雄は1922年、沖縄に行く。すすめたのは柳田國男である。柳田はその2年前の20年から2カ月間、奄美・沖縄・宮古・八重山を旅して「海南小記」を著した。彼もまた「まれびと」の一人である。

柳田は、田辺に喜舎場永洵(えいじゅん)を紹介した。21歳から八重山・石垣島の古謡の収集調査を始め、生涯を古謡の研究に捧げた男である。また、石垣島測候所の岩崎卓爾。仙台の生まれながら沖縄に惹かれ、石垣島に渡り、沖縄民俗学に大きく寄与した。

宮廷音楽は男のものだが、庶民の音楽・舞踊の担い手は遊郭の女だと知って感銘を受けた田辺は、帰京すると舞踊劇「与那国物語」を歌舞伎座で上演した。それは、39年になって、秦豊吉率いる日劇ダンシングチームによる「琉球レヴュウ」に受け継がれる。

本書には、他にもさまざまな興味深い「まれびと」が登場する。東京生まれの作者もまた、父と母の生れた沖縄を確かめに訪れる「まれびと」であったという。果たして、その旅はこれで終わりになったのだろうか。

よなはら・けい
ノンフィクションライター。1958年東京生まれ。『文藝春秋』『東京人』『婦人公論』『週刊ポスト』などにルポやエッセイを発表。朝日新聞などに書評を執筆。著書に『美麗島まで』『街を泳ぐ、海を歩く』『物語の海、揺れる島』『もろびとこぞりて』『サウス・トゥ・サウス』など。

小学館101新書 777円 254ページ

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