トヨタ自動車の豊田章男社長「米NUMMIに続く工場閉鎖は難しい」--過剰生産能力解消に要時間

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トヨタ自動車の豊田章男社長「米NUMMIに続く工場閉鎖は難しい」--過剰生産能力解消に要時間

トヨタ自動車の豊田章男社長は8日、先に閉鎖を決めた米ゼネラル・モーターズ(GM)との合弁会社NUMMI(ニュー・ユナイテッド・モーター・マニュファクチャリング、カリフォルニア州)に続く工場閉鎖について、「閉鎖は最後の最後で、苦渋の選択肢だ。なかなか難しい」と述べ、これ以上の過剰生産能力の解消には時間がかかる、との見通しを明らかにした。

トヨタが現在保有する世界の生産能力は約1000万台。一方、今2010年3月期の販売目標台数は660万台で、差し引き300万台以上が余剰となっている。米NUMMI(生産能力:約30万台、トヨタ車のみ)の場合、合弁相手であるGM破綻を受けて、旧GM側がNUMMIの事業から撤退を決断。それに伴って、トヨタも閉鎖を決めた経緯がある。トヨタにとっては初の大型工場閉鎖であり、いわばNUMMIは異例の措置なのだ。それでも、自動車需要がプリウスなど一部の例外を別にして本格回復を見せない中、トヨタにとって「次なる工場閉鎖がどこか」は、常に関係者の焦点となっていた。

この問いに対し、豊田社長は明確に否定した形だ。一部報道で、「トヨタ、生産能力100万台減」と報じられたが、その実態は高岡工場(豊田市)や英国工場(ダービー州)にある、生産ラインの一時“休止”によるもの。“廃棄”でなく、需要が回復すればラインを再び稼働させることが前提にある。言い換えれば、現在の過剰な生産能力は、閉鎖されるNUMMI分を除き、そのまま温存されるわけだ。ただ「(ライン休止以外に)ほかにもいろいろな手を考えていく」(豊田社長)と語ったものの、抜本的な解消策は見えてこない。

トヨタは工場閉鎖や正社員削減を伴わない固定費削減などで、700万台の販売でも採算が取れるよう内部努力を続けているものの、豊田社長は現時点での損益分岐点については、明言を避けた。来11年3月期黒字化を掲げる以上、700万台の販売台数は最低線。だが、分母(=生産能力)の1000万台を本格的に削らない限り、かつてのような兆円単位の営業黒字に復活するには、かなりの時間を要しそうだ。


《東洋経済・最新業績予想》
 (百万円)    売 上  営業利益   経常利益  当期利益
◎本2009.03   20,529,570   -461,011   -560,381   -436,937
◎本2010.03予  16,800,000   -650,000   -600,000   -350,000
◎本2011.03予  20,000,000    400,000    450,000    400,000
◎中2008.09   12,190,405    582,068    636,487    493,469
◎中2009.09予   7,800,000   -400,000   -350,000   -250,000
-----------------------------------------------------------
          1株益\    1株配\
◎本2009.03       -139.1        100 
◎本2010.03予      -111.6      90-95 
◎本2011.03予       127.6    100-110 
◎中2008.09        156.9         65 
◎中2009.09予       -79.7      30-32 
大野 和幸 東洋経済 記者

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おおの かずゆき / Kazuyuki Ohno

ITや金融、自動車、エネルギーなどの業界を担当し、関連記事を執筆。相続や年金、介護など高齢化社会に関するテーマでも、広く編集を手掛ける。

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