水ビジネスを深耕へ、沸き立つ総合商社

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事業拡大に虎視眈々 大型案件投資も視野

こうした状況を打破しようと、すでに一部の商社は動き始めている。冒頭の丸紅による南米・水道会社への出資はその一例。既存の水道事業会社を傘下に収めることで、現地での営業基盤だけでなく、インフラ設備の運営・管理ノウハウをグループ内に取り込もうというわけだ。

三井物産も同様の戦略を進めている。03年からメキシコの下水処理事業に参画してきた物産は昨年夏、現地パートナーだったアトラテック社を買収した。同社は、水処理プラントの設計・建設、操業などを得意とする水専門のエンジニアリング会社。昨年末、メキシコ都市部のグアダラハラ市から受託した20年間の下水処理業務では、このアトラ社が中心となり、プラント設計から設備の運営・保守まで、すべての業務を三井物産グループで完結させる。同社担当者も「専門的な技術・ノウハウを持つ会社がグループに加わった効果は大きい。今後はメキシコ以外の国にも積極的に出て行く」と話す。

総合商社最大手の三菱商事も虎視眈々とチャンスをうかがっている。同社は今年春、有望な成長分野の強化を目的とした社長直轄の組織を新設。太陽光発電などの新エネルギー、ITと並んで、水・環境事業を重点分野に据えた。

今や大手商社がそろって熱い視線を送る水処理分野。「水は間違いなく有望な産業になる。その果実を得るために必要とあれば、大きな投資もいとわない」と、大手商社の幹部は言い切る。商社の水ビジネスががぜん熱を帯びている。

(渡辺清治 =週刊東洋経済)

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