水ビジネスを深耕へ、沸き立つ総合商社

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 これまでの投資で鉄鉱石や石油などの資源権益を持つ大手総合商社は近年、市況高騰を追い風に空前の好業績を謳歌してきた。だが、資源バブル一巡と実体経済の悪化で、今年度は各社とも大幅に利益が減る。一方、インフラ事業は、資源・エネルギーのような大儲けは期待できないが、国や自治体との長期契約が基本となるため、景気動向に影響されず長期的に安定した収益が見込める。

しかも、潜在需要が極めて大きい。上下水道などの水インフラは、世界的にも政府や自治体による公共事業が基本。しかし、自治体の財政難や運営効率化のため、近年は外資を含む民間資本を活用する国が増加。とりわけ、人口増加や経済・産業成長で水の消費量が急増している新興国では、需要に対応した浄水・造水設備はもちろんのこと、環境汚染対策で普及が遅れている下水インフラ整備の必要性にも迫られている。

「検討を重ねている水のプロジェクトはいくつもある」(大手商社幹部)と、有望市場の取り込みを加速させている日本の商社にとって、今後の焦点は主導権を握ったプロジェクトをどこまで増やせるかだ。

現在、世界の水関連産業を見渡せば、“水メジャー”と称される、仏スエズ、同ヴェオリア、英テムズの欧州3社が圧倒的な存在感を誇っている。フランスや英国は上下水道事業の民間開放の歴史が長く、結果、巨大な水メジャーの誕生につながった。中でも、付加価値の高い水関連設備の運営・管理は、豊富な実績とノウハウを蓄積した3社が世界規模で寡占している。日本の商社が数多く携わってきた中東産油国での海水淡水化事業も、その大半は水メジャーとの共同プロジェクト。商社自体は設備運営のノウハウなどが乏しいために、メジャーに主導権を握られているのが実情だ。

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