“弱肉強食”を疑似体験させるハリウッド流放任教育《ハリウッド・フィルムスクール研修記5》


 8月下旬からAFI大学院(アメリカン・フィルム・インスティテュート/米国映画協会)の秋学期がスタートし、私の留学生活も2年目に入りました。今年は日本人の新入生はおらず、2学年合わせて約300人のうち唯一の日本人になってしまいました。

2年目にもなるとだいぶ心理的余裕が出てきましたが、キャンパスで見かける新入生を見ると自分の1年前の経験を思い出します。それは大学院初日から、ハリウッドの競争原理をたたき込まれた刺激的な記憶です。

入学初日のピッチセッション

AFIでは入学時から「監督」「脚本家」「プロデューサー」「撮影監督」「美術監督」「編集」の6学科に分かれて、専門の教育が行われます。AFIは、基本的に業界経験者を対象とし、平均年齢も他のフィルムスクールより高いこともあり、入学早々、容赦ありません。

セレモニーも特にないまま、監督7人・脚本家7人・プロデューサー7人の計21人のグループが作られ、その場で教師2人と残りのクラスメートに対して短編映画の企画をプレゼンする「ピッチセッション」(→第2回参照)が始まります(学生という立場なので、本来は「…志望の学生」と表記すべきでしょうが、本稿では便宜上「監督」「脚本家」「プロデューサー」等と表現します)。

AFIでは1年目に3本、2年目に最低1本の短編を製作しますが、この入学初日のピッチセッションは、1本目の作品を作るチームを組むためのプレゼン大会のようなものです。

順番にピッチが始まるものの、それまで海外経験がいっさいなかった私は、早口のピッチを「まったく」理解することができませんでした。日本在住の英会話教師のスピーチが、生徒のレベルに合わせた110キロのストレートだとすれば、ピッチはさしずめ150キロの高速スライダー。スピードが速いうえに、スラングや難単語が多く、自分でも顔が引きつっているのが感じられました。

私も含めた全員のピッチが終わったあと、教師から「今から1時間で、監督・脚本家・プロデューサーの3人グループを自分たちで作る」ことを命じられます。フィルムスクールに入ってくるようなメンツですから、当然みんな自分がピッチした企画を元に映画を作りたい。しかし一方で自分の企画にこだわりすぎると、メンバーを集められない。そんなジレンマの中で、教師はいっさい仲介することなくチームを作らなくてはなりません。

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