「ネットで資金調達」はアニメの新潮流になるか 消費者有利の時代を逆手に取った作品づくり

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――あと、今のアニメの主流は複数の会社に出資を募る製作委員会方式だと思うのですが、そうしたスタンダードな方式を取らなかったのはなぜでしょうか?

本条:ひとつは「ファンからの支援」を軸に作品を発信できること。ファンとコミュニケーションしながらコンテンツを展開するのは、コンテンツの新しいかたちですよね。そしてもうひとつ大きな理由として、クラウドファンディングでファンに制作費用を前払いしていただくことによって、僕らクリエイターがコンテンツの「ライツ」を直接管理できるということですよね。

ライツマネジメントのメリット

本条:ライツの管理には気を使っていて、アニメに限らないと思いますが、主要スタッフをどれだけやっても権利を確保できず、クリエイターには何も残らないというのをこれまで繰り返してきたわけです。クリエイターがビジネスの使いっ走りとして働くよりも、自分たちがビジネスオーナーになろうという気持ちがありました。そうしたライツマネジメントの観点からも、クラウドファンディングという方式を採用しました。

それは決して僕ら側のメリットという事情だけではなくて、原作者でもあるクリエイターがライツをマネジメントすることによって、作品世界や事業展開もおかしな方向に行かないし、クオリティも管理できるという意味で、ユーザーのためでもあると思っています。

――企業がコンテンツのライツを抱え込んだ結果、プロジェクトが全部閉じられちゃって、ユーザーが熱望しても続編も何も出せないような事態に陥ってしまうこともありますしね。

本条靖竹(ほんじょう やすたけ)/プロデューサー、原案、脚本を担当。アニメ製作会社シンフォニウム代表取締役。慶應義塾大学文学部卒。コミックの編集や、多くの美少女ゲームのシナリオ、ディレクション、プロデュースを行う。代表作に同人ゲーム『リザイン』(シナリオ・ディレクション)、美少女ゲーム『制服天使』(シナリオ・ディレクション・プロデュース)など。同作にて「萌えゲーアワード2012」ニューブランド賞金賞を受賞。今作ではプロデュースの他、コミック・アニメのシナリオも担当する

本条:やっぱり通常のアニメの世界だと企業さんがスポンサーになって、仕事を請けるという形でしかクリエイターはかかわれないんですけど、「どういう作品を作りたいか」という企画段階からクリエイターが積極的に企画を出して、ファンとも直接交流して意見を採り入れたり、ライツマネジメントもしたり、集客したりなど、ある意味で同人サークル経営に近い形かもしれません。

そうしないと上に行けないという意識が、僕にはあります。

――上というのは?

本条:いつまでも使われる側であるよりは、自分たちでライツやコンテンツを管理して、それを大きくさせていきたいという気持ちがあるので。ただの職人として関わるのではなく、ビジネスオーナーとして関わっていこうということですね。

クラウドファンディングという方法ありきではなく、ビジネスオーナーとしてコンテンツを立ち上げようとしたんですね。「でもおカネないしどうしよう?」と。

銀行借り入れという方法もあったけど、クラウドファンディングという方法が最近出てきているから、試してみよう、ということですね。それがコンテンツとしても面白い。

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