鴻海がシャープの買収に固執する本当の理由 シャープには「郭会長の夢」がある

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ただ、品物にケチをつけてくる人こそ買ってくれる人だ。鴻海とシャープの提携が進むとすれば、このリスト事件は郭会長にとってよりよい条件と交換できる武器となる。

ある日本企業の幹部は、「もしシャープの経営が倒れそうでなければ、鴻海にチャンスがあるはずがない」と断言する。郭会長は、日本社会が不可能だと考える中で機会をとらえ、チャンスを作った。彼は鴻海の効率性、経営体制、保有顧客にシャープが頼れば、シャープは必ず新しい道を切り開くことができると強く信じている。

郭会長がシャープに固執するのは、鴻海が夢に描いてきたものをシャープが持っているからだ。一方、シャープとしても、倒産を免れ、社員の大量解雇を避け、傘下の事業が8つに分散されることを防ぐためには、鴻海の傘下に入ることを選択するしかない。

シャープの「IGZOパネル」が鴻海の夢

シャープにはIGZOパネルがある(撮影:尾形文繁)

シャープは世界の液晶技術の先駆者であり、40年以上に及ぶ液晶ディスプレイの研究・開発の経験を蓄積している。このため、シャープの液晶パネルの研究・開発と製造技術は、現状では技術でリードしている韓国のサムスン電子やLGディスプレーと対抗できるに十分なものがある。

特に、シャープが持つIGZOパネル技術は世界独自のものであり、鴻海をフォローしている多くのアナリストは、これが郭会長がシャープの買収にこだわる重要な原因だと考えている。IGZOはシャープが初めて量産化に成功した酸化物半導体だ。

集邦科技(DRAMeXchange)傘下のWitsViewに所属する液晶パネル・アナリストの邱宇彬氏は、アップルが12.9インチのiPad Proに全面的にシャープのIGZOパネルを採用したことから見て、IGZOパネルの節電性と高解像度という特色は、中型パネルの分野で極めて大きなポテンシャルを持っている、と指摘する。

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