タカタ製部品、交換作業が遅れている理由 なぜ代替品の生産が軌道に乗らないのか

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エアバッグは車種によっては1台に10個も搭載され、インフレーターの種類はエアバッグの取り付け位置によって異なる。形状別では、大きく分けてディスク型と筒状に分類される。

ディスク型が使われるのは主に運転席・助手席用で、形状がハンバーガーを包む箱に似ていることから「ハンバーガー」と呼ばれる。直径10センチほどだが、大きさやガス発生剤の量は車種によって変わる。一方、筒状が使われる後部座席やサイド、膝用などは「ホットドッグ」と呼ばれる。

昨年、約1180万台をリコールしたトヨタ<7203.T>も、交換部品の約4分の1をダイセルから調達した。供給する同業他社は、自社製品の中からタカタ製に似たサイズを探し、タカタのエアバッグ内に収容できるよう設計変更する必要がある。既製品をそのまま適用することができない。ある同業他社のエンジニアは「タカタが自動車各社と一緒に設計した既存のスペースに収まるようにしなければならないので、非常に複雑だ」という。

さらにタカタ製品のリコールがいろんな車種に及んでいるため、インフレーターの設計もそれに合わせなければならない。ガス発生剤の出力もそれぞれ調整する必要がある。車が2000年モデルの場合、すでに廃止されたタイプも複製しなければならない。

想定以上にかかる時間

ダイセルは交換部品の生産について「遅れは生じていない」(広報)という。しかし、タカタと同じような製品がないオートリブは「それぞれ異なる製品の設計・実証段階がある」(広報)として「最大2000万個の(交換用)インフレーターの生産には予想以上の時間がかかっている」と話す。別のサプライヤー幹部も「通常2―3年はかかる設計や試験の工程を数カ月単位にスピードアップしなければならない」と対応の難しさを嘆く。

タカタも、交換用の生産量は「劇的に増えている」(広報)と説明するが、最大顧客のホンダ<7267.T>が今年2月に発表したリコールでは、実際に部品交換を始めるのが6月の予定で、交換部品不足解消は待ったなしだ。

原因と責任の所在が正式に確定していない現在、自動車各社がほぼ肩代わりしているリコール費用は、各社の収益を押し下げる。「心情的にはタカタと縁を切りたい」(大手メーカー幹部)との本音が出る半面、タカタからシートベルトの供給も受けていて、簡単に縁を切ることもできない。「交換部品がすべて製造されるまでタカタは存続し続けるだろう」(バリエント社のスコット・アップハム社長)。

 

(田実直美、白木真紀 編集:宮崎大)

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