天坊昭彦・石油連盟会長(出光興産会長)--“補助金漬け”には疑問、再生可能エネルギー開発

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天坊昭彦・石油連盟会長(出光興産会長)--“補助金漬け”には疑問、再生可能エネルギー開発

地球温暖化防止に向けた「脱石油」の動きが盛んだ。今回の衆院選でも各党が、太陽光や風力などの再生可能エネルギー利用の必要性を強調した。だが一方で日本は、米国のような明確なエネルギー戦略が描き切れていないのも事実だ。ムード先行ともいえるエネルギー政策論に、石油連盟の天坊昭彦会長(出光興産会長)は何を思うのか--。

--衆院選では、自民党が二酸化炭素(CO2)排出量を2020年に05年比で15%削減、民主党は30%削減の中期目標を掲げましたね。

20年といっても、あと10年しかない。自民党はCO2削減の前提として、原子力発電所を9基新設するとしているが、現状、運転中なのは34基で19基は停止中だ。稼働率は平均60%程度。今後10年間で完成するのも4基程度といわれている。その一方で、太陽光や風力は発電容量がさほど大きくない。安定した電力を供給しようとすれば、石炭、石油に頼らざるをえない。

また、自動車のハイブリッド化や電気自動車への取り組みも、今後10年間ですべてのクルマが切り替わるのは無理。せいぜい半分だろう。両党ともCO2削減目標を出すのなら、工程表を明示すべきだ。15%削減するのも現実的に難しいのに、30%という非現実的な数字を掲げても意味がないのではないか。

民主党は再生可能エネルギーを国内で調達する、と主張している。その方向性自体は間違っていないだろう。ただ、短期間で“補助金漬け”の状態で推進するのが本当にいいのか疑問だ。もっと技術開発に力を注ぎ、技術革新を待ってから普及させてもいいのではないか。太陽光の発電効率は13%にすぎない。日本中をパネルで埋め尽くしても、手に入るエネルギーはそれほど多くはない。

--現実を踏まえたエネルギー政策論が行われていない、と。

エネルギー政策は国の安全保障上非常に大切なもの。日本はエネルギーの90%以上を海外からの輸入に頼っている。1次エネルギーに占める石油比率を低減する“脱石油政策”を続けているが、20年後の30年時点でも、1次エネルギーの37・7%は石油に依存しなければやっていけないのが現実。

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