「ダウン症」で生まれた子どもは不幸ですか? 世界ダウン症の日に考えたいひとつのこと

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「短命」というイメージをお持ちの方も、いらっしゃるかもしれません。これは、ダウン症児の半数近くが、心臓疾患の合併症を抱えて生まれるため、幼い頃に亡くなってしまう場合も多いことに起因しています。

しかし現在は、心臓手術や消化器官の疾患も含めた、医療の進歩がめまぐるしく、ダウン症の人の平均寿命は、健常者と変わらないところまで達しています。

補足すると、ダウン症の人が短命といわれた背景には、もうひとつの理由があります。ある親御さんは、ダウン症の子どもを授かった際に、医師からはっきりと、宣告されたそうです。

「この子は長く生きても税金を払いませんから、積極的な治療はしません」

その昔、障害を持つ子どもが生まれれば、蔵に閉じ込めておくようなことも珍しくありませんでした。同時に「親戚の手前もありますので、なかったことに……」という親の思惑も表裏一体。「短命」という情報が漏れ伝わったのには、「短命であるほうが助かる」という、ダウン症の赤ちゃんにとって言葉にしがたい、悲しい現実が存在していたからです。

ダウン症の子はいらない? 新型出生前診断の波紋

医療の進歩、そして時代の変化とともに、ようやく、「長く生きられるようになった」ダウン症の人たち。現在、日本でも、年間1200人ほどのダウン症の赤ちゃんが生まれていると推定されています。

ちなみに、ダウン症の子どもが生まれる確率は、「約1/1000」といわれますが、これは母親が20歳代前半の場合の確率です。30歳代半ばであれば、約1/300。40歳代の場合であれば、約1/90と、母親の年齢が上がれば、確率も上がっていきます。高齢出産化が進んでいる昨今、同時にダウン症の子どもの出生も増えていくと考えられています。

 しかし、2013年。ダウン症の人やご家族にとって、衝撃的なニュースが駆け巡りました。「新型出生前診断」の開始です。

妊娠10週以上の母体から20mLの血液を採取するだけで、胎児の染色体異常の有無を、高精度に判別することが可能になったのです。

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