温度差大…地方の自主防災「形骸化」の危機 「災害経験の少ない地域」にどう根付かせるか

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地域ぐるみで行う防災訓練。平時の備えや地域で助け合うシステムがいざというときに命を守る=2月28日、嬉野市塩田町の鍋野公民館

阪神大震災では救助された人のうち、自衛隊や消防に助けられたのはわずか2割程度で、残り8割は家族や隣人に助けられたという調査結果もある。

「『自分たちが』という意識がないと」と高尾さん。防災手引書を各戸に配布して勉強会を開き、非常持ち出し袋の共同購入や、地区の運動会で、かまどで米を炊いて振る舞うなど、住民に「防災」を少しずつでも意識付けるようにした。

一方、早くから自主防災組織を立ち上げた地域でも、町内会役員が「当て職」で防災責任者を兼務し、活動実態がなかったり、避難訓練は東日本大震災の震災直後に1回きり、というケースもある。また、数字上は組織率100%でも、実態は「全町で一つ」という自治体もあり、非常時に地域ごとの機動力が発揮できるか疑問もある。

回を重ね、定期的に顔を合わせることが大事

唐津市では震災後、自主防災組織の立ち上げが遅れた分、行政がコーディネーターとなり、訓練計画の策定や防災知識を持ったリーダー育成で組織化を後押ししてきた。

同市沿岸部の大島町自主防災会では、青年団や消防団、町内会女性部や福祉委員を組織に組み込み、責任を分担させることで、担い手の年代の幅を広げ、訓練内容を充実させている。

今月末には10メートルの津波を想定し、高台への避難訓練を行うほか、夏には土砂崩れからの避難、秋には救急救命法の講習と活動は活発。4年目に入った今も住民の参加率は7割を超える。

「最初は住民の間ではやらされ感もつきまとうが、回を重ねることが大事」と安岡一徳会長(74)。住民が定期的に顔を合わせることが、いざという時の「自助」「共助」につながると信じている。

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