マツダは本当にミニバンから撤退するのか 3列シート多人数乗りの位置づけを考える

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三菱自動車「デリカD:5」やスバル(富士重工業)「クロスオーバー7」のように、独自のキャラクターでアピールするという手法もあるだろう。しかし三菱やスバルは4WDが車作りの中核をなしており、それを生かしたミニバン作りはユーザーに理解されやすいのに対し、マツダのブランドイメージは最初に書いたように走る歓びであり、以前の記事(「マツダのデザインはなぜカッコ良くなったか」)でも書いたように、魂動デザインは肉食系猛獣の走る姿にヒントを得ているなど、箱型のミニバンとはそもそも相容れない。

今後はSUVへシフトか

マツダがミニバンから撤退するとなれば、それによって空く生産能力は、世界的に人気の高いSUVに振り向けられそうだ。SUVは、スポーツ・ユーティリティ・ビークルの略であることからわかるように、スポーツ性もキャラクターのひとつである。ゆえにポルシェやマセラティのような、スポーティなブランドが続々と参入している。

マツダ「CX-5」はスカイアクティブテクノロジーと魂動デザインも盛り込んでいる

マツダも国内で「CX-3」と「CX-5」という2車種のSUVを販売しており、そこにはスカイアクティブテクノロジーと魂動デザインも盛り込んでいる。いずれも販売は好調だ。これ以外に北米市場向けとして、ミニバンと同じ3列シートを持つ「CX-9」を生産しており、こちらは最近新型に切り替わった。

ミニバンと同じ3列シートを持つ「CX-9」

一部ではこのCX-9も、MPVの後継車として日本導入するという噂があるが、全長5m以上、全幅1.9m以上のビッグサイズが日本で広く受け入れられるとは思えない。これをベースとして、かつて販売していた「CX-7」の復活版を登場させるのが、グローバル市場を考えれば得策ではないかと考える。

マツダのミニバン撤退のニュースからは、グローバル市場への比重をさらに高めたいという意志を感じる。近年のスバルに通じる判断だと感じている。スバルは現行「レガシィ」や「フォレスター」について、メインマーケットである北米を重視してボディサイズを大幅に拡大した。その結果、一部の国内ユーザーから批判的な声が聞かれたが、結果的に北米での販売台数は伸び、利益率ではトヨタを抜くまでになった。

近年のマツダのクルマづくりは、スカイアクティブテクノロジーにしても、魂動デザインにしても、完全にグローバル指向であり、国内のファンを含め、ミニバン撤退に納得する人が多いのではないだろうか。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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