転機の中小企業資金繰り支援-借り入れ負担に限度、個々の状況に応じたプログラムを

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転機の中小企業資金繰り支援-借り入れ負担に限度、個々の状況に応じたプログラムを

政府・自民党が中小・小規模企業の資金繰り対策を導入して、10カ月余りが経過した。昨年10月1日から政府系金融機関によるセーフティネット貸し付け3兆円、10月31日からは民間金融機関の融資に対して保証協会が100%損失を保証する緊急保証制度に6兆円の枠を用意してスタート。2次補正(2009年1月27日成立)ではそれぞれ10兆円、20兆円に拡大、さらに09年度補正予算ではそれぞれ17兆円、30兆円と、大盤振る舞いとなっている。

10年前より中小企業は疲弊

保証の実行額は8月18日現在で67万6560件、金額は13兆2060億円に達した。セーフティネット貸し付けは累計で6月末までで17万0892件、2兆9643億円である。

ところが、中小企業の倒産件数は相変わらず高水準だ。中小・小規模企業がほとんどなので、東京商工リサーチの調査による全国企業倒産の数字で見てみる。

08年9月は、夏場の原油・原材料価格の高騰を背景に、前年同月比で34・5%増の1408件と急増。10月の対策導入後も、前年同月を上回り続け、今年5月にようやく6・7%減の1203件と前年同月を下回った。だが、6月には再び同7・4%増、7月は同1・0%増と拡大している。負債総額では、4月以降前年同月を下回っているので、小規模企業の倒産が多いことがわかる。

10年前の金融危機の際にも、今回と同様、特別保証制度で30兆円、政府系3金融機関で20兆円の融資枠が用意されたが、このときは違った動きとなった。1998年10月に導入後、11月には倒産件数が前年同月比で早くも減少し、その後も下回り続ける。そして、99年12月から再び増加に転じているのだ。

この背景には、今回との問題の性質の違いがある。10年前の問題は、金融機関の不良債権であり、大方の金融機関が債務超過という異常事態の中、資本規制をクリアするためにリスク量(融資量)を削らざるをえず、健全な企業からの貸し剥がしすら横行した。多くの中小企業の収入基盤には問題がなく、資金の手当てさえつけば経営は改善した。

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