NEC離脱で混迷、国策スーパーコンピュータ開発


 1154億円もの巨費を投じ、文部科学省が世界最速を目指す次世代スーパーコンピュータ(スパコン)開発。統括する理化学研究所(理研)の下、富士通、NEC、日立製作所という異例の“3社共闘体制”で2006年にスタートした。

だが5月に入り、NECがスパコンの心臓であるCPU(中央演算処理装置)を含むシステム詳細設計の終了時点で離脱を表明。NECと連携していた日立も撤退を決めた。10年の試験稼働を目前に控え、7月に富士通1社での新計画を発表するという異常事態に見舞われている。

巨額赤字で火の車 スパコン事業見直しへ

鳴り物入りで始まった国策プロジェクトの背景には、日本の存在感の希薄化がある。国際スーパーコンピュータ会議で発表されるランキングによると、日本は1999年にシェア11・2%で世界2位だったが、09年6月は3%に凋落。一方で米国はスパコンのトップ10をほぼ独占し、6割程度のシェアを保ち続け、10年前にはランク外だった中国がトップ5入りしている。文科省は「今後の科学技術の発展や、わが国の国際競争力の向上に極めて重要」と、12年までに世界最速となる10ペタ(1ペタは1秒間に1000兆回)の演算能力で、ランキング1位を狙う。

国威を懸けた戦略だったが、開始3年目にNECは撤退を余儀なくされた。その理由を「CPUの生産段階まで進むと、100億円程度の自社負担が発生する」と説明する。NECは09年3月期に2966億円の最終赤字を計上し、研究開発費の縮小を迫られている。07年にノーベル平和賞を受賞した国連の地球温暖化研究で「地球シミュレータ」(写真)が利用され注目を浴びたものの、08年度のスパコン販売は48台。採算の低いスパコン事業は、見直しの対象となった。

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