人気!鉄道会社の「総合職」がやっていること リニア新幹線にかかわる仕事に就く道とは?

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同社が推進する海外展開の目的は、運行事業への直接参入などではない。コンサルティングや技術協力を通じ、高速鉄道のマーケットを国際的に拡げ、将来にわたって高速鉄道の技術・品質の維持向上やコストダウンを図ることが目的だ。中心となっているのは「C&C(Consulting & Coordination)事業室」という部署だ。

C&C事業室は高速鉄道の海外展開で「司令塔」となる部署。事務系統の場合、契約などに関する法務、財務や広報などといった部分で、事務系統の仕事は増えつつある。小峰さんは「海外を中心に事業展開する会社と比べれば、海外展開に関わる人数は全体の中では多くない」というが、一方で「事務系統の社員でも適性や能力を踏まえて配属され、活躍している」と説明する。

これらの海外で行うビジネス以外でも、訪日外国人客の増加などで、海外を意識して取り組む仕事は増えている。総合職・事務系統の場合は年に1度、人事部が全員に面談を行い、仕事の状況や希望などを聞く機会があるほか、同じく年に1度、書類での調査も行われるが、小峰さんは「学生さんは目につきやすい仕事への希望が多いかもしれないが、鉄道業は本当に幅が広い。予想もしていないような多岐にわたる仕事が待っており、それぞれにやりがいがある」と語る。

「安定志向」ではいけない

同社の2016年度の採用内定者数は、総合職全体で82人、そのうち事務系統は29人。うち19人が男性、10人が女性で、「男の職場」のイメージが強かった鉄道業も女性の活躍が広がってきていることがわかる。

鉄道業というと「鉄道ファンは入れない」といった噂がよく聞かれる。特に総合職の場合はそのように言われる傾向が強い。実際のところはどうなのだろうか。

小峰さんは「鉄道が嫌いでは困るし、好きであってほしいことは間違いなく、鉄道好きがダメということは全くない。だが、ファンとプロは違うので、鉄道しか関心がないというのでは困る」という。小峰さんによると志望者には「(鉄道には)関心の高い方が多いとは思う」が、商社や不動産、金融などさまざまな業界を回る中で、鉄道業の使命や事業内容に魅力を感じたという人が多いようだ。

鉄道業というと「安定」というイメージを持たれがちだが「リニア中央新幹線をはじめさまざまなプロジェクトに挑戦していく会社だけに、仕事への熱意、新しいモノを作り上げる創造力が必要で、安定志向や前例踏襲だけでは困る」と小峰さんは話す。

今後は日本も人口減少社会に突入し、鉄道にもこれまでと違った展開や試練が待ち受ける。JR東海に限らず、大手の鉄道会社は数多くの関連事業を抱える巨大な企業グループ。そのマネジメントを担う総合職には、現状に安住せず、次世代の鉄道業のビジョンを描ける視野の広さやチャレンジ精神が求められるといえそうだ。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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