(第16回)<中江有里さん・前編>他人に甘えてみて先が開けた高校時代

(第16回)<中江有里さん・前編>他人に甘えてみて先が開けた高校時代

今回は、女優、そして最近では執筆活動での活躍も目立つ中江有里さんのお話です。 10代半ばで芸能界デビューし、大阪から単身上京。仕事をしながら、4つの学校を経て高校の卒業証書を手にしました。
昨年秋に初めての小説となる『結婚写真』を上梓。いじめられる女の子といじめられる先生が登場する2つの物語には、自身の学校体験の思い出が含まれています。
 学校体験を振り返り、教訓となっている出来事や、忘れられない苦い思い出などをお話くださいました。

●幸せは忘れてしまうもの

 学校の思い出……と振り返り、頭に浮かぶのは嫌な思い出ばかり。楽しかった時期ももちろんありましたが、そのとき、何が楽しかったのかということは思い出せないもので……幸せなことって思い出せないものなのですね(笑)。
 私たちの世代は、いわゆる『団塊ジュニア世代』といわれ、生徒数がとても多かった。同じ学校でも一つ下の学年になると、一クラス分くらい生徒数が少なかった。今になってみれば、「先生達も大変だったんだろうな」と思いますね。

●放課後は「家事」と「宿題」

 小さな頃はピアノや習字を習っていましたが、中学生の頃は、塾や習い事を何もしておらず、その当時としては珍しい存在でした。母子家庭で母が働いていたので、家事をする人がいなかった。だから、放課後は家事と宿題をしていました。
 そのときは母の代理でやっていたので、とても嫌でした。でも今になってみると、そのことで家事が自然に身に付いたんだなと思い、ある意味、母に感謝しています。しかし、当時は毎日不満たらたらでした。でも、母の背中を見ると何も言えなかった。私たちのために働いているのだってことが、ダイレクトに伝わってきたから。「これ欲しい」とか、「あそこに行きたい」などと思っても言えません。毎日休みなく働く母を見ていたら、それはただ自分のわがままなんだということがわかるだけ。
 私はけっこう早熟だったと思います。なので、物わかりはよかったと思いますけど、かといって家事をしっかりやっていたかというと、いい加減。よく怒られていましたね(笑)。

●4つの学校を経て、高校を卒業

  私は、4つの高校に在籍しました。高校に4つも通っていた人なんて聞いたことないので、人に話すとよっぽどの落第生かと思われるんですよ(笑)。
 最初は大阪の女子校、次が東京で夜間の学校、その次は三部制の高校、そこでも出席日数が足りず、最後の手段で通信制の学校に行きました。それぞれの学校でいい先生に巡りあっています。

 通信に来ている生徒は、年齢も置かれている境遇もさまざまで、私のように芸能活動をしている人もいましたが、どんどん辞めていってしまうんです。学校に来なくていい分だけ、自分で努力していかなければいけないことがたくさんある。私自身も、仕事をしながら学校へ通い続けていくことが相当辛い時期もありました。でも、自分の都合とは関係なく、テストもあるのは他の学校と同じ。この頃の私は、既に働いていたから、人に甘えたくなかった。みんなも子どもがいたり、それぞれの環境の中でなんとか、「学校に行きたい」という強い思いをもってきていた。その中にいて、自分は特別だなんて思いませんでした。

 そんなときに先生が、「自分一人でがんばらないで、もっとみんなに甘えてもいいんじゃないの」と言ってくれたのです。その言葉が力になって「じゃあ、甘えてみようかな」と。それから、出られなかった授業のノートを友達に貸してもらったり、一緒に勉強をしたり、友達との時間が持てるようになったのです。通信だと、もともと学校に行くのは週に1回。1ヶ月に1度くらいしか行かないこともあるので、それまでは友達があまりできなかった。冗談みたいな話ですが、3ヶ月ぶりに学校に行こうと思ったら道を忘れていて学校にたどり着けなかったこともあります(笑)。

●芸能界の仕事と普通の学生生活

 このときの私は、学校に行かなくても誰にも何も言われないわけです。もともと、大阪から仕事をするために東京に出て来たのだから、学校は二の次。学校を辞めれば辞めたで、みなさんに迷惑をかけずにすんだこともあります。撮影のスケジュールを動かしてもらったり、海外ロケを1泊3日でこなして帰ったこともありましたから。学校がなければそんなことはなくていい。でも、それでもなんとか抵抗して学校に行き続けて、よかったなと思っています。とにかくやれるところまでやりたかったのです。半分は意地です(笑)。また、自分が仕事一色で染まるのも早すぎるかなという抵抗感もあり、普通の、このくらいの年代の子が過ごす学生生活というのも持っていたほうがいいんじゃないかなと、今考えるとそういう思いもあったと思います。

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