ソニー「α6300」に秘められたスゴい技術 高級コンパクトは「高速」と「高精度」を両立

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像面位相差方式の利点は、ピント位置が手前、あるいは奥にズレているのか判別でき、またどの程度ピンがズレているか?という”程度”まで検知できる点にある。このため、レンズのフォーカスをどの方向に、どの程度調整すればピントが合うかが事前に判別できる。このセンサーが425個も備わっているため、空間をある程度把握できるわけだ。

そのうえでα6300はコントラスト検出式のオートフォーカス処理を行う。コントラスト検出式とは読んで字の如くで、イメージセンサーから読み出した映像のコントラスト差、すなわちエッジ部の色や明るさが急峻に変化する差が最大になるよう調整する方式だ。

コントラスト検出式では、ピントが奥にズレているのか、手前にズレているのか見極めることが難しい。しかし、像面位相差方式で素早く”ほぼOK”のピント位置に合わせ、さらにピンポイントでピントを合わせるべき位置(像面位相差方式で大まかには特定されている)のコントラスト差を検出して合焦とする。

高速でかつ高精度

オートフォーカスは多くの場合、速度を速くしようと思うと精度が規制になり、精度を高めようとすると速度が遅くなるものだった。ところが、ファストハイブリッドフォーカスは極めて高速なオートフォーカスを実現しつつ高速だ。

しかし、これで終わりというわけではない。ピント合わせをここで終わらせるのではなく、ピントが合ったと判別されるまでのプロセスが終わった後、合焦点の近傍に200個もの小さなオートフォーカス評価点をカメラ内部で評価する。

オートフォーカスのポイント数が非常に多いのが特徴だ

目的の被写体を見つけてオートフォーカスするだけでなく、オートフォーカスする点の周囲に、さらに細かく200マスに分割したコントラスト検出の点を並べ、それぞれどこまでピントが合っているのかを評価する。こうすることで、さらに細かな領域に掘り下げて高精度のオートフォーカスを行いながら、動く被写体を追従する。

いわば、被写体を”凝視”するようなもの。一度、ここだと発見した被写体を凝視しながら追い続け、高速で動く相手にもピントを合わせ続ける。この”凝視”という考え方を、さらに前に進めるために、イメージセンサーそのものを改良し、読み出し速度を劇的に高めたのである。

残念ながらボディ本体内に手ぶれ補正機能を持たないα6300だが、ソニーのEマウントレンズには豊富な手ぶれ補正レンズが揃っている。ボディ内手ぶれ補正を持たない分、コンパクトな仕上がりとなっていることを考えれば、ひとつのトレードオフとして受け入れられるのではないだろうか。

α6300は、とにかく使っていて気持ちがいい。ミラーレス一眼は連写時にはファインダー像が途切れ、うまくフレーミングできないことも少なくないが、本機にはそれがないという点も大きい。ソニーらしく、動画撮影の画質も実に優れており、万能性もある。

スポーツ撮影の現場などでなくとも、動きまわる小さな子どもやペットなどを撮影する際の難易度が劇的に下がるはずだ。カメラ好きだけでなく、日常を手軽に写真に収めたい方にもオススメしたい。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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