「3月人事」にイラつく人に欠けている視点 明日につながる「気持ちの整理術」

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しかし出世するからには必ず理由があるし、自分がそうならなかった理由も必ずあるものです。そこに気付けていない。

――勘違いに気付くというのは、結構つらいことですね。

勘違いしたままでいたいのか、現実を直視する努力をするのか。どちらを選ぶかは、その人の人生です。厳しいようですが、鈍い人は鈍いなりの人生を歩むんですよ。そしてマズイことが、それなりに何回も起こるのです。できれば気がついたほうがいいですよね。

『決定版 上司の心得』で、私は「過大評価も過小評価も避けなさい」と書きました。過大評価は奢りにつながり、過小評価は卑下につながる。自分を勘違いしているのです。正しい判断を狂わせて、本当の意味での成功から人を遠ざけます。どちらも決して自分の利益にはなりません。

過大評価の落とし穴

――自分を誤解しているために被る不利益があると。

たとえば、私の知り合いに自己評価が高すぎて東レを辞めた人がいました。東大出身の同期で極めて優秀な男でした。私も一時、彼が将来、東レの社長になるんじゃないかと思っていたくらいです。

その彼が、課長になるタイミングで1年遅れたんです。しかも、遅れたのはその1回だけではなかった。その次の昇進も遅れて、3回目にも遅れたときに、彼は会社を辞めました。「この会社にいたら俺は出世できない。自分は正当に評価されていない」と。

確かに能力は高い。しかし、上からは評価されなかった。なぜ評価されないのか、そこを考えようとせず、彼は転職して行きました。辛抱ができなかったんですね。東大法学部卒、東レ出身ということで、転職先では厚遇で迎えられたようです。ところが期待した答えが出せなかった。結局そこも辞めてしまい、その後もうまくはいかなかったようです。

――昇進ができない理由があったということですね。しかし、自分を客観的に見るのは難しいことです。

本当に難しいです。どれほど難しいことか、面白い話がありますよ。

東レには、定年に向けて心と経済の準備をするための50代対象の研修がありました。そろそろ先も見え始め、みんな焦ったり不安になったり落ち込んだりする世代ですからね。

その研修では、「あなたは明るいほうですか?」「友だちはたくさんいますか?」「本はどのくらい読みますか?」といった100問にも上る質問にあらかじめ答えておくんです。それを分析して、回答者がどういう人間かを診断する。そして、参加者が5人ずつのグループになって、その診断結果を回覧しながら、どれが自分の診断かを当てるゲームをやるんです。

次ページ自分を当てた人は、どのくらいいたのか?
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