アップル、「サンフランシスコ新拠点」の狙い クパチーノへの一極集中主義から変化

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アップルのサンフランシスコでのこれまでの展開は、ビーツ・ミュージックやトプシー・ラブズなど、既に同市に拠点を置く企業の買収を通じたものが主だった。

サンフランシスコの新オフィスの大きさは約7万6000平方フィートで、500人程度が勤務できるという。グーグルやリンクトインなどと比較すると大きくはない。アップルは、本社のあるサンタクララ・バレーの従業員は2万5000人を超えるとしている。

不動産業界の専門家らは、アップルがサンフランシスコで賃貸したスペースは現在建設中で、入居が始まるのは夏の終わりあたりになるとの見方を示した。

かつては想像できず

2013年の報告書によると、サンフランシスコに住む同社従業員は14%と、サンノゼの25%に次いで2番目に多かったにもかかわらず、アップルがサンフランシスコにオフィスを置くこと自体、かつては考えられなかったと複数の元従業員は話す。

人材会社ミレミアム・サーチのアーミッシュ・シャー氏は、求職者の中にはアップルの「(本社への)集中化」を嫌う人もいると述べた。人材会社によると、サンフランシスコを拠点とするIT企業は増加しており、市民にとっては長い通勤時間を必要としない仕事の選択肢が増えているという。過去にアップルで採用を担当したホセ・ベニテス・コン氏は「高い競争性を維持し、最も優秀な人材を得たいのであれば、フレキシブルに対応しなければならない」と指摘する。

クパチーノでは拡大の余地がもうそれほど残されていないという点も、アップルの新拠点設置の理由である可能性がある。クパチーノ市の経済発展部門のアンジェラ・ツイ氏によると、同市のオフィススペースの約70%はアップルが使用している。アップルはクパチーノ周辺のサニーベールやノース・サンノゼにもオフィスを設置している。

オフィスが広くなったことで本社ならではの魅力が低下したと話す匿名の元従業員もいる。「以前は、本社で働く技術者であれば、カフェテリアに行けばスティーブ・ジョブズ氏が寿司を注文している姿などがみられたものだが、それは過去のことだ」と述べた。

共同創業者のウォズニアック氏は、チームを広げることで新たな創造性が生まれることがあると指摘する。最近のインタビューで同氏はかつて「集中化」に反対した人物が自身以外にはいなかったと話し、「チームにより独立した考え方を持たせるべきだと思った」と述べた。

 

(Julia Love記者 翻訳:本田ももこ 編集:加藤京子)

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