不倫を経験した20代後半女性のリアリズム 東京の「婚活事情」最前線<10>

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「彼は確かに家族を大事にしていたけど、それはあくまで家族としてであって、恋愛しているのは私っていう自信はあった。土俵が違うと思ってたから、嫉妬心もあまりなかった。秘密の関係の共犯意識は刺激的で、彼も私も夢中になってたのは間違いないの」

高収入とスマートな恋愛、私は圧倒的に勝ち組

密会場所はいつも夜景の美しい有名ホテルや隠れ家レストランの個室。スケジュールを合わせて旅行も何度もしたという。贅を尽くした非日常的な時間は確かに二人の絆を深めたのだろう。

思い返せば、理恵子にここまでの色気が出たのは不倫生活があったからに違いないと思う。それ以前の彼女は美人ではあるが、少し神経質ともとれる清純さがあった。その男との密会を重ねることで色気を身に着けたのだろう。妻子ある年上の男が若い自分に夢中になっていく様は、彼女にとっての快感だった。

「彼に仕事のアドバイスももらえるからか、私は同期の中でも出世が早くてお給料もかなり上がった。恋愛も上手くいっていて、公私ともに私以上に充実した20代女性なんていないとも思ってた」

当時の理恵子は、確かに同世代の男だけでなく女たちにも「私はあんた達とはレベルが違う」というような冷ややかな目を向けていた。

周りを見渡せば、少ない給料をあくせく貯めてハイブランドの時計を買い、小金をチラつかせて女を釣る社会人デビューの男たちや、仕事は二の次でアフター5にせっせとメイクを直し男に媚び、小さなダイヤモンドの婚約指輪を買わせるのに必死な女たちばかり。そのどれにも属さず関わらない自分は圧倒的な勝ち組だ。

「私の人生は最高だった。そんな中判明したのが……彼の奥さんが妊娠したってニュース…」

理恵子は想像以上に打ちのめされ、傷ついた。以前まで気にならなかった彼の家族に対してどうしようもない嫉妬を抱き、惨めな敗北感でいっぱいになった。何より本妻と愛人の決定的な格差を身に染みて実感した。一時は仕事にも行けず、げっそりと痩せ周囲も心配する程だった。

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