東芝・佐々木社長の所信表明、今期営業益1000億円必達と12年3月期の営業利益3500億円掲げる

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東芝・佐々木社長の所信表明、今期営業益1000億円必達と12年3月期の営業利益3500億円掲げる

「私に課せられた最大の課題は、昨年赤字に陥った苦境から一瞬でも早く立ち直って、黒字化して、さらに利益ある持続的成長へ再発進していくことだと思っている」--。

東芝は、このほど佐々木則夫社長が就任後初となる経営方針説明会を開催した。今2010年3月期に会社計画の営業利益1000億円の必達をあらためて協調するとともに、12年3月期に営業利益3500億円まで改善させる、という中期目標を示した。

今期は固定費削減3000億円を計画(社内目標の3300億円)している。09年4~6月期(第1四半期)は、計画していた560億円を上回る870億円の削減を達成済み。さらに第2四半期以降も着実な削減を実行することで1000億円の営業利益計画のをあらためて強調した。

さらに課題事業である半導体事業の改善策として、ディスクリート(個別半導体)は、6インチ、8インチへのウエハの大口径化や後工程の海外移管を進める。システムLSIは、前工程の北九州工場から大分工場への製品移管と後工程の合弁事業によるコスト競争力の強化を打ち出した。主力のNAND型フラッシュメモリは、スマートフォン向けなど今後も需要は伸びると見て重点投資を継続する。7月から32ナノメートル製品の量産を開始しており、今期末には32ナノ製品比率を65%まで高めることで生産コストを引き下げるとともに、後工程でアウトソースを活用し効率化を図る、としている。

半導体以外の課題事業では、液晶事業は低付加価値のアモルファスシリコンの生産ラインを4ラインから1ラインに縮小するほか、国内拠点の統合を進める。家電事業も国内製造開発拠点を統合集約する。携帯電話事業は海外生産へ移管し、テレビ事業は英国工場の製造終了などを行っていく。

もっとも、こうした課題事業の構造改革施策は、ほとんどが発表済みであり、従来施策の確認・まとめという意味合いが強い。

今回初めて打ち出したのは12年3月期の数値目標。12年3月期に売上高8兆円、営業利益3500億円、財務自己資本比率25%(少数株主持分を含む数値で含まない従来基準だと20%)、デッドエクイティレシオ80%(同、従来数値だと100%)としている。

営業利益の過半を占めると期待するのは社会インフラ事業だ。中でもカギを握るのが佐々木社長の出身事業である原子力事業。すでに全世界で13基を受注済み。さらに積み増して39基の受注を見込む。また、発電所の建設のみならず・ウランの権益確保から、燃料生産、発電所の制御などサービス事業まで一環体制を確立することで原子力事業は16年3月期に売上高1兆円を目指すとしている。

もう一つ、営業利益増加のカギになるのは、前期に大赤字となった電子デバイスの改善。「半導体事業は世界3位以内を堅持する」(佐々木社長)と一定規模を追求し、かつ前述の効率化により、コスト競争力や収益力を強化で安定高収益体制の確立を目指す。

このほか説明会ではCCS(二酸化炭素の分離回収)事業や太陽光発電システム事業、巣マットグリッド、新型電池事業、LEDなど新照明事業、通信と放送の両ネットワークを活用したネットワーク端末、医療&水処理事業など様々な事業に言及し、一部は数値目標も示された。もっとも、やや総花的であり努力目標の域を出ていない、という印象が残った。

財務体質は、6月の増資で最悪期よりマシになったものの、依然としてかなり痛んでいることに変わりない。追加の資本調達について、佐々木社長は否定的な見解を示しており、利益の積み上げで財務体質の改善を図っていくことになる。6月には増資に加え、(当面の金利が)7.5%の劣後債による資金調達も行っている。この高い金利負担を吸収するためにも、収益力の増大が必要とされている。

所信表明通り、12年3月期に営業利益3500億円を達成できるのか。佐々木社長の手腕が問われるだけでなく、東芝の現体制を作り上げた西田厚聰会長の評価も決めていくことになる。
(山田 雄大)


《東洋経済・最新業績予想》
(百万円)    売 上  営業利益 経常利益  当期利益
◎本2009.03  6,654,518 -250,186 -279,252 -343,559
◎本2010.03予 6,200,000 100,000 0 -50,000
◎本2011.03予 6,800,000 180,000 70,000 45,000
◎中2008.09  3,495,830 -23,468 -63,505 -38,454
◎中2009.09予 3,080,000 0 -70,000 -50,000
-----------------------------------------------------------
         1株益¥ 1株配¥
◎本2009.03  -106.2 5 
◎本2010.03予 -11.8 0-5 
◎本2011.03予 10.6 0-5 
◎中2008.09  -11.9 5 
◎中2009.09予 -11.8 0-2.5 

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