共和党でトランプ氏まだ圧倒的優位ではない 序盤戦終え、米大統領選の今後を占う

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では共和党はどうであろうか。クルーズ氏もトランプ氏同様にワシントンの政治を批判しているが、同氏の支持層は保守的なエバンジェリカル(キリスト教福音派)層であり、国民的な支持の広がりは期待できない。共和党内での反発も極めて強い。おそらくトランプ氏以上にクルーズ氏の対する忌避感が強い。クルーズ候補は、「選挙戦はマラソンだ」と主張し、党大会での決選投票まで持ち込む気でいる。

一方、ルビオ氏は、ケーシック氏が撤退すれば、共和党主流派の全面支援を期待できる。ルビオ氏も上院議員1期目で、ワシントンの政治に染まっていないが、国民に対して何をアピールしようとしているのか分からない。同氏は、若く、キューバ移民の子であり、クリントン候補に唯一勝てる可能性があると主張しているが、支持層を大幅に拡大する可能性は小さいだろう。

共和党指導部はトランプ氏の候補指名阻止に動く

消去法も含めて考えれば、共和党はやはりトランプ氏が大統領候補に指名される可能性が最も高いだろう。ただ、依然、大きな疑問符が残る。勝利したといわれるスーパー・チューズデーでの同候補の得票率は34%に過ぎない。マサチューセッツ州では49%を獲得したが、ミネソタ州ではわずか21%に留まっている。今までの選挙全体で見ても共和党員の3分の1の支持しか得ていない。共和党内の保守主義グループも、トランプ氏に反対している。トランプ・ブームが加速し、投票率が高まり、浮動票を大量に獲得でもしない限り、7月のクリーブランドで開催される党大会までに過半数の代議員を獲得するのは厳しいだろう。

共和党指導部はトランプ候補阻止に動いている。大量の資金を用いて反トランプ・キャンペーンを行うことを計画している。また党大会での決選投票が行われれば、党中央の一部はルールを変更して、トランプ氏の大統領候補指名を阻止する意向を明らかにしている。トランプ氏では議会選挙に勝てないと漏らす共和党議員も多い。ただ、クリントン候補に勝つためにトランプ候補の下に大同団結すべきだと主張する大物議員もいる。

多くのメディアはトランプ氏の大統領候補指名は間違いないと報道し始めているが、誰が最終的に候補になるにしても、まだまだ波乱は起こりそうである。
 

中岡 望 ジャーナリスト

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なかおか・のぞむ / Nozomu Nakaoka

国際基督教大学卒。東洋経済新報社編集委員、米ハーバード大学客員研究員、東洋英和女学院大学教授などを歴任。専攻は米国政治思想、マクロ経済学。著書に『アメリカ保守革命』。

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