セブンに突き付けられた成長一辺倒への疑問、値引き事件が浮き彫りにした“構造問題”

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ガイドラインでは「原価割れ」を制限

7月に入って、セブンの井阪隆一社長は週2回のペースで自ら公取委に足を運んだ。公取委が求めた、値引き販売に関する新たなガイドラインの内容をすり合わせるためだ。

そこでセブンが固執したのが、仕入れ価格を下回った値引き販売を制限することだった。それを許してしまうと、「粗利配分」というコンビニモデルの根本が崩れてしまう。いわゆる原価割れでは、本部のロイヤルティが減るという事情もあった。

ガイドラインには、加盟店が仕入れ価格を下回った販売価格を設定した場合、発生した損失を加盟店が負担する旨が盛り込まれた。セブンが受け入れに転じた最大の理由もここにある。無秩序な値引きが回避され、セブンからは安堵の声が聞こえる。

「コンビニは変化対応業である」。これは鈴木会長の持論であり、哲学だ。にもかかわらず、今回の件は、その変化対応を最大の強みとしていたセブンが、外部の圧力がなければ変われない事実を露呈した。

実はセブン社内では現場に近いオペレーション部の幹部を中心に、数年前から加盟店支援策の必要性が議論されていた。しかし、廃棄ロスの15%本部負担、複数店経営奨励制度などの新たな支援策を決定し、加盟店向けに通知したのは公取委排除命令の翌日のことだった。

加盟店の実情を承知しながらも、なかなかトップを含めた議論に発展してこなかった組織の硬直性こそ、今のセブンが抱える問題かもしれない。今こそ、セブンの「変化対応力」が問われている。

(週刊東洋経済)

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