IT業界の2016年度業績は、ズバリこうなる 「会社四季報」記者が大胆予想、注目企業は?

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電機 曇り→薄曇り

中国経済減速の影響が電機各社の業績に悪影響を与えている。

日立製作所については『会社四季報』新春号と比べ、500億円の営業益下振れが見込まれる。主な理由は、資源価格の下落を受け、石油やガスのプラント受注が大幅に減少したからだ。加えて、中国向けの建設機械や自動車関連機器などのオートモーティブの落ち込みも痛かった。

三菱電機は新春号からの大きな変化はない。FA(ファクトリーオートメーション)やパワー半導体、昇降機が中国で失速。ただ、自動車機器事業が欧米で好調なことや自動車向けパワー半導体が好調なこと、家電も空調を軸に前第3四半期と比較して17%増益と踏ん張っている。現在の会社計画3000億円で春号でも同数字を見ている。だが、保守的に数字を作る三菱電機だからこそ、数百億円前後での上振れの可能性も残っている。

東芝は構造改革優先

東芝は構造改革優先で、どこからがマーケットの影響かわからないため、記載はできれば避けたいところだが、あえて書くとすれば、NANDフラッシュメモリの価格が下落。若干、「供給過剰」というアナリストの見方がある。

注目企業は、大阪の淀川近くにある電機メーカー、ダイヘン。祖業は電力会社向けの変圧器だが、今ではアーク溶接ロボットやワイヤレス給電システムなどが主力だ。2016年3月期は2007年3月期以来9期ぶりに過去最高の純利益を更新する見込みだ。

稼ぎ頭のアーク溶接ロボットは、前期と比較すれば若干中国減速の影響を受けているが、他メーカーと比べて大きなマイナス影響は出ていない。中国では人件費高騰を背景に積極的な設備投資をする工場も多く、ダイヘンの扱うロボットはその需要を上手く取り込めた。前期と比べてやや落ちている分は、国内の造船や建設向けの溶接機器が補っている。今春にはミュンヘンにも溶接関連の販売拠点を開設し、欧州での事業拡大を狙う。電力機器も積極的にASEAN諸国を開拓中でダイヘンの成長はまだこれからだ。

電気 薄曇り→薄曇り

リーマンショック以降、多くの電気メーカーが家電など最終製品事業からスマホ向けなど電子部品事業に軸足を移した。そのため、近年はいかに勝ち馬の最終製品メーカーに納入するかが、勝負を分けてきた。

しかし、その勝ち馬の代表格である米アップルでさえも、市場の飽和で成長に陰りが見えている。いわゆるアップルショックだ。スマホ頼みで成長は描けず、次なる成長の種として各社が期待を寄せるのは車載事業。自動運転機能やヘッドアップディスプレイなど、今後電装化が見込まれる自動車は、電気業界の主戦場となるものとみられる。そこにいかに食い入るかが、電気メーカーの今後を分けそうである。

アップルショックはソニーにも影響

アップルショックの余波はソニーにも来ている。ソニーはスマホのカメラに用いるイメージセンサーで高いシェアを持ち、今や金融に次ぐ収益柱となっている。そのイメージセンサーが当初の販売見込みを下回り、事業の業績見通しの下方修正を余儀なくされた。

もっとも、ソニーは今期、家電やスマホ事業における構造改革効果で増益見込みである事に変わりはない。しかし、”成長牽引領域”に位置付けていたイメージセンサー事業の失速は今後のソニーの成長に暗い影を落とす。パナソニックも前途洋々ではない。中国の景気鈍化の影響で、中国におけるノートPC向け二次電池やエアコンの販売が想定を下回ったことが主因となり、第3四半期決算で下方修正を余儀なくされた。売上高の修正幅は4500億円に上り、過去最大の下げ幅となった。

電気メーカーが苦戦する中、気を吐いているのが象印マホービンだ。象印はインバウンド需要を取り込み、炊飯器などの販売が好調であることで知られる。しかし最近、中国当局が空港税関での持ち込み品チェックを厳格化し、一定額以上の持ち込み品に対する課税を強化するなど、逆風が吹いている。

ただ、象印の切り札は炊飯器だけではない。象印は2016年、ステンレスマホービンの生産能力を上げ、さらに国内外で売り伸ばす予定だ。ステンレスマホービンは小さいためトランクに入り、税関で目を付けられにくい点が好感されている。さらに中国の百貨店における販売も好調で、まだまだ中国人の心をつかんで離さないようだ。

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