“映画評論家”細野真宏が指摘 「興収2000億円から一歩踏み出すには」

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 アメリカではアカデミー賞作品は興行収入が100億円規模になりますが日本は5億円程度。映画を評価する力の乏しさを感じます。たとえばホームページをチェックすれば監督の過去の作品はすぐわかる。自分の好みに合う監督を見つければ、事前に当たり外れの精度が高まり、有意義な時間を過ごせる可能性も高まります。「映画を見る目」は、心掛け一つで養えていけるものなんです。

ただ、作り手も待つだけでは駄目。業界全体の興行収入は1948億円(2008年)。新しい試みがなければ再び2000億円を超えることはできない。そこで何だかんだ言っても影響力を持つのはテレビ局。ドラマの延長だけでなく、本物志向の映画を目指すことが重要だと思います。

その点で、最近のフジテレビの取り組みは興味深い。一つは7月公開の『アマルフィ』。何でもCG技術で作る時代に、コストをかけてローマで全編撮影をしました。そこを観客がどれだけ支持してくれるか。

また、アカデミー賞脚本賞の『サイドウェイ』という映画を、20世紀フォックスと組んで『サイドウェイズ』(10月公開予定)としてリメークしています。優れた脚本はそのままにメインの俳優には日本人を起用。ハリウッドの外国人スタッフと撮影した作品です。原作に劣らぬ出来栄えで本来のよさをわかりやすく、新たな形で見せていると思います。

こうした作品を面白いと感じる人が増えていくと「この脚本は面白い」と、アカデミー賞の価値をわかる人が育つ可能性がある。採算性を重視した作品ではないかもしれませんが、きちっと儲けが出るような仕組みになっていけば、今後の映画界にとって面白く、前向きな流れになるのではないかと期待しています。

ほその・まさひろ
大学在学中から予備校講師として活躍。数学専門の予備校を主宰する。『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?』(扶桑社)など著書多数。年間300本以上を鑑賞する映画評論家としての顔も持つ。

(週刊東洋経済 撮影:今井康一)

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