マイナス材料続出のマンション業界、新規販売は超低水準

「共同事業の相手が民事再生法を申請し、販売計画がストップした」。そう嘆くのは、人気のつくばエクスプレス沿線の新規物件が頓挫した不動産会社。マンション販売に逆風が吹く中だけに痛い。

業界には昨年以降、それまで数年続いた好調ぶりにハッキリとカゲリが出てきた。不動産経済研究所の調べでは、首都圏マンションの月間契約率は2007年は69・7%と、好不調の境界線である70%を16年ぶりに割り込んだ。背景には、消費者の買い控えムードがある。

理由はマンション価格の高騰と言われる。実際、好調な販売状況を味方に、業界では06年以降、まず用地代上昇分を上乗せした「新価格」を提示。続く07年には建築費上昇分を上乗せした「新々価格」を提示してきた。この結果、04~07年の4年間に首都圏全体で約13%の値上がりとなった(不動産経済研究所調べ)。しかし、この数字自体、バブル期の1986年から90年の4年間の上昇率2倍超と比べると、値上がりは緩やかという印象を一瞬受けがちだ。

が、当時と明らかに違うのが、販売価格と給与水準とのギャップだ。厚生労働省によると、税込み現金給与は85~89年に約13%上昇したのに対し、03~07年は逆に約3%低下。給与が上がらなければ、割高感は余計に強まる。サブプライム問題による景気後退懸念も心理面でマイナスだ。

実は、首都圏での変調は06年から始まっていた。同年の月間契約率は78・3%と一見高いが、契約戸数は5万8314戸へと前年から1万戸以上落ちていた。契約率が高かったのは、マンション業者が発売を1万戸近く絞ったためだ。つまり06年からすでに、供給戸数減は始まっていたのである。

「逆新価格」で経営圧迫? 業界の二極化が加速

では今後はどうなるか。不動産経済研究所では、改正建築基準法による着工遅れの打撃はこれから本格化するとして、今年の首都圏の新規供給戸数を6万戸割れの5・4万戸とみている。この数字は93年の4・4万戸以来の低水準だ。

一方、マンション事業コンサルティング、トータルブレインの久光龍彦社長は逆の見方を提示する。同社調べでは、首都圏で新価格の始まった06年から1年間の値上がり率は約15%。「逆に、この程度の値下げを断行すれば、団塊ジュニアを中心とした購買層は動き出す」と言う。

実際、大胆な値下げ宣言で話題になった新日鉄都市開発と東京建物の「ココロコス」(東京都東村山市)は、500万~700万円の値下げで「昨年の3倍ペースで売れている」(関係者)と言う。販売低迷を打開するには、新価格ならぬ「逆新価格」の提示も必要になるかもしれない。

ただここへ来て、費用対効果など「商品の魅力度」に対する購入層の目は厳しくなっている。「逆新価格」でもダメなら下値メドを探る動きが一段と活発になる。15%の値下げは「物件によっては赤字になる可能性もある」(久光社長)と言うように、企業業績への打撃は避けられない。商品開発力の弱いマンションメーカーは窮地に立たされるだろう。その結果、業界の二極化は加速し、再編へ向けた動きも本格化しそうだ。
 

(週刊東洋経済)

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